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文花【あやはな】(文学)

源氏物語 若菜(わかな) 5

[キーフレーズ]
出家への思いが増す

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●原文
今までおぼしとどこほりつるを

●訳
今まで、躊躇ためらっておられたが、

 
●原文
なほそのかたもよほすにやあらむ、

●訳
前よりもますます出家したい気持ちにられるのだろうか、

●意訳
(私は、自分がもう長くはないと悟っているためか、)無自覚のうちに、出家への思いが増しているのであろう。

●言葉の意味
・なほ・・・
ますます。前にも増して。
・催(もよほ)す・・・
引き起こす。き立てる。
[例文]「春はやがて夏のもよほし」
[訳] 春はそのうち夏の気配を誘い出し。
[意訳](春が終わってから夏が来るのではなく)春は自分が消える前に、自身で夏を誘い出し。
[出典]徒然草 155

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●解説
朱雀院すざくいんは、このたびの御病気になられてからは、もう長くはないと悟られ、出家への思いが日に日に増していた。

 
《今日の言葉》
「本当のことを言っていれば、何も覚えておかなくてもよい」 
マーク・トウェイン
(アメリカの作家)
(1835~1910)

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源氏物語 若菜(わかな) 4

[キーフレーズ]
やりたいようにできなかった

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●原文
きさいみやおはしましつるほどは、

●訳
きさいみやがいらっしゃった間は、

●言葉の意味
きさい・・・
朱雀院すざくいんの母親である弘徽殿こきでん大后おおきさい

 
●原文
よろづはばかりきこえさせたまひて

●訳
すべての面で、遠慮申し上げなさって、

●意訳
万事ばんじにつけて、自分の感情のおもむくままに行動できなかったのだが、

●言葉の意味
・よろづ・・・
あらゆることにおいて。万事につけて。
はばかる・・・
遠慮する。気兼きがねする。

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●解説
朱雀院すざくいんは、母が亡くなって以降は、やりたかった事(仏道修行ぶつどうしゅぎょう)をやろうと考えていた。

 
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≪今日の言葉≫
「人生は芝居のごとし、上手な役者が乞食になることもあれば、大根役者が殿様になることもある。とかく、あまり人生を重く見ず、捨て身になって何事も一心になすべし」
福沢諭吉
(1835~1901)
(同時代の人:
出口なお 1837年生まれ
ニーチェ 1844年生まれ)

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源氏物語 若菜(わかな) 3

[キーフレーズ]
出家への思い

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●原文
としごろ行なひおこない本意ほいふかきを

●訳
朱雀院すざくいんみかどは、)長年、出家しゅっけの意思が深かったのを

●言葉の意味
・ころ・・・
とし」「つき」などの語に付くと、時間経過を表す言葉になる。
としごろ・・・
長年の間。
行なひおこない・・・
出家。仏道修行ぶつどうしゅぎょう
本意ほい・・・
かねてからの願い。

●その他
・本(漢字の成り立ち)・・・
「木」の根本ねもとの部分に「-(しるし)」をつけた字が「本」→(意味)→
根本こんぽんかなめ

●解説
もう長くはないと悟った朱雀院すざくいんは、出家を考えている。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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≪今日の言葉≫
「ある段階を超えると、所有物が主人となり、所有者が奴隷となる」
ニーチェ
(1844~1900)
(同時代の人:
伊藤博文 1841年生まれ
孝明こうめい天皇
1831~1867
在位 1846~1867)

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文花【あやはな】(文学)

源氏物語 若菜(わかな) 2

[キーセンテンス]
もう長くは生きられないと感じる

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●原文
もとよりあつしくおはしますおわしますうちに、このたびはもの心細こころぼそおぼされて、

●直訳
朱雀院すざくいんは、)もともと病気がちでいらせられる中で、今回は何となく心細こころぼそくお思いになられて、

●意訳
朱雀院すざくいんは、)もともと病気がちでいらっしゃったが、このたび病気になられてからは、もう自分は長くはないとお感じになられて、

●言葉の意味
朱雀院すざくいん・・・
光る源氏の兄。
・もとより・・・
もともと。普段から。
あつし・・・
病気が重い。(例:危篤きとく)
・もの心細こころぼそし・・・
何となく心細い。
おぼす・・・
お思いになる。お思いあそばす。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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≪今日の言葉≫
「ゆっくり歩くこと」
シェイクスピア
(イギリスの作家)
(1564~1616)
(同時代の人:
ガリレイ 1564年生まれ
伊達政宗 1567年生まれ)

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新古今集 見渡せば山もとかすむ

[キーフレーズ]
春の夕暮れ

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●原文
見渡せば 山もとかすむ 水無瀬川
夕べは秋と なに思ひけむ 

みわたせば やまもとかすむ みなせがわ 
ゆうべはあきと なにおもいけん

新古今集しんこきんしゅう 36 
後鳥羽院ごとばいん

●訳
見渡せば、山のふもとかすみ、(近くには)水無瀬川みなせがわが流れている。夕暮れのながめは秋に限ると、何故なぜ思っていたのだろう。春の夕暮れもよい...

●言葉の意味
・見渡せば・・・
みをしている宮からのながめ。
・山もと・・・
山のふもと
水無瀬川みなせがわ・・・
今の大阪府高槻たかつき市を流れる川。
後鳥羽院ごとばいん水無瀬離宮みなせりきゅうがあった。
・夕べは秋・・・
清少納言せいしょうなごんが書いた「秋は夕暮れ」「春はあけぼの(夜空がほのかに明るくなる頃)」を意識した。
・なに・・・
どうして。

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≪今日の言葉≫
「心の底からやりたいと思わないなら、やめておけ」
ヘミングウェイ
(アメリカの小説家)
(1899~1961)
(同時代の人:
岸信介  1896年生まれ、
横光利一 1898年生まれ)

 
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源氏物語 若菜(わかな) 1

[キーフレーズ]
朱雀院すざくいん御不例ごふれい
御不例ごふれい・・・貴人きじんの病気)

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●原文
朱雀院すざくいんみかど、ありし御幸みゆきののち、その頃ほひころおいより、つねならずなやみわたらせ給ふたもう

●訳
朱雀院すざくいんみかどは、少し前に紅葉のうたげ御幸みゆきなされた。そのあとぐらいから、御身体おからだの具合が悪くなられ、苦しんでいらっしゃった。

●言葉の意味
朱雀院すざくいん・・・
光る源氏の兄。
御幸みゆき・・・
天皇すめらぎの外出。
・ありし御幸みゆきののち・・・
先日の(紅葉のうたげの)御幸みゆきの後。
頃ほひころおい・・・
(その)頃。
つね(れい)ならず・・・
(病気のために)体の状態がいつもと違っている。
・悩む・・・
病気で苦しむ。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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≪今日の言葉≫
「あせってはいけません。 ただ、牛のように、図々しく進んで行くのが大事です」
夏目漱石
(1867~1916)
(同時代の人:南方熊楠みなかたくまぐす 1867年生まれ、出口王仁三郎でぐちおにさぶろう 1871年生まれ)

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文花【あやはな】(文学)

大空は 藤原定家(ふじわらのていか)

大空おおぞらは うめのにほひに かすみつつ
くもりもはてぬ はるつき
            藤原定家ふじわらのていか

大空おおぞらうめかおりにたされてかすんでいる。そしてぼんやりとくもったままでいるはるつき...

このうた素晴すばらしいところは「かすみ」という視覚しかくくわえて、「にほひ」という嗅覚きゅうかくにもうったえているところです。
さらに、「にほい」というえないものを「かすみ」というえるものにしてしまいました。えるものとえないものがみだれている...
そして「くもりもはてぬ」とつづき、おぼろげさがしていきます。

本歌ほんかは、

りもせず くもりもはてぬ はる
おぼろ月夜づきよに しくものぞなき
              大江千里おおえのちさと

あかるくもなくくらくもないはるおぼろ月夜づきよ。これにならぶものはない。

大江おおえうた本説ほんせつ(うたつくさいもとにしたぶん)は、

不明不暗朧朧月
     白氏文集はくしもんじゅう
めいならずあんならず朧朧ろうろうたるつき

どれも、ぼんやりとしたはるんでいるすぐれたうたです。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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花は散り 式子内親王

花は散り その色となく ながむれば
むなしき空に 春雨ぞ降る
             式子内親王しきしないしんのう

(はなはちり そのいろとなく ながむれば むなしき
そらに はるさめぞふる)

桜の花が散って、何を眺めるというのでもなく、ぼんやりとしている。何もない空に春雨が降っている。

平安時代の終わり頃に詠まれた歌です。天皇すめらみことによるまつりごとが終わろうとしていました。また、式子の人生も終わろうとしていました。桜が散るのを見た式子内親王は、色々なものを重ね合わせながら歌を詠みました。

かたは、人並外れて頭が良く、たくみなわざを使いこなしながら、気持ちを火のように燃え立たせて多くの歌を作りました。心の内に盛りあがる気持ちをうたに表したいという思いが彼女の全ての歌に含まれています。
式子の歌は、藤原定家ふじわらのていかの歌作りのわざに万葉歌詠み人うたよみびとあふれ出る思いが混ざっています。これこそが、巧みな技をいしづえとして美しさを表そうとうする行いです。

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