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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 39

[キーワード]
神示しんじ

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●原文 (本居宣長『古事記伝』より)
投夜水而知承基。

●書き下し文 1
よるみづいたりてもとゐけむことをろしめす。

●書き下し文 2
みづくくりて[而]もとけむと知る。

●書き下し文 3(本居宣長『古事記伝』より)
夜の水に投(いた)りて基を承むことを知(しろ)しめす。

●意訳
東國に御下りなさる途上で、夜中に伊賀のなばり横河よこかわに御到着なさった。
この時、広さ十丈余りの黒雲が現れ、空をおおったので、尋常ではないとお思いになり、占われたところ、「天下が分かれるが、最終的には大海人皇子おおあまのみこが天下を掌握なされる」という結果が出た。
+
・「水」・・・
「横河」を指す。現在の名張川?
・「投(いた)る」・・・
到着する。
・「基」・・・
日本の土台となること、すなわち、天皇の位に就くこと。
・「ろしめす」・・・
「知る」の尊敬語。

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●言葉の意味
・「基」(正規の読み)・・・

もと,もとい,もと(づく)
・「基」(正規の意味)・・・
1 もと。もとい。建物の土台。「基礎」
2 もと。もとい。物事の土台。根本。物事が成り立っている基礎になるもの。「基本」
3 基づく。根拠とする。拠り所(よりどころ)とする。「基因」
・「坐」(正規の読み)・・・
いなが(ら),いま(す),おわ(す),すわ(る),そぞろ(に),ましま(す)
・「承」(正規の読み)
ショウ
うけたまわ(る),う(ける)

●解説 1
・「濳龍體元―洊雷應期」「聞夢歌而想纂業―投夜水而知承基」で、対句に成る。

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●解説 2(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
聞夢歌而想纂業。投夜水而知承基。
・夢の歌を聞(きき)て業を纂むことを想ひ。夜の水に投(いた)りて基を承むことを知(しろ)しめす。
此は天津日嗣しろしめすべきさとしの有しことなり。
夢ノ歌の事は書紀に見えず。漏(モレ)つるなるべし。
投夜水(夜ノ水ニ投ル)とは、東國に下り坐サむとして、夜中(サヨナカ)に伊賀の隠(ナバリ)の横河(ヨクカハ)に至リ坐シしことなるべし。
此時に廣さ十餘丈(トツヱノマリ)の黒雲おこりて、天にわたりければ、異(アヤ)しとおもほして、御自占(ミゝヅカラウラ)へ賜ふに、天ノ下二ツに分れて、つひにはみな得たまふべき祥(サガ)なりしこと、書紀に見えたり。
【聞ノ字、開と作(カケ)るは誤なり。今は一本に依ル。】
(意訳:
此の文は、天皇の位を継承せよとの神のお告げが有ったことを述べている。
「投夜水」(夜ノ水ニいたる))とは、「東國に御下りなさる途上で、夜中に伊賀のなばり横河よこかわに御到着なさった。
この時、広さ十丈余りの黒雲が現れ、空をおおったので、尋常ではないとお思いになり、占われたところ、天下が分かれるが、最終的には大海人皇子が天下を掌握なされるという結果が出た」と、『日本書紀』には記されている。
【「聞」が「開」となっている写本は、誤って書き写されたものと考えられ、ここでは「聞」を採択する。】

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

(アクセス日:2017/1/22)
・古事記をそのまま読む

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・南さんちの「つれづれなる記」
(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第132回)

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古事記(ふることふみ) 37

[キーワード]
天武天皇

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●原文 1
洊雷應期

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
洊-雷應期。

●書き下し文 1
洊雷せむらい おうず。

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
洊雷期に應ず。

●意訳 1
大海人皇子おおあまのみこは天子(天皇)となる時期を迎えられた。
(本居宣長の説では、易において「洊雷」は「太子」(天皇となるべき皇太子)を意味する。)

●意訳 2
易経でいう、「洊雷震」(しきりに雷震す))の時期を迎えた。
(「洊雷震」は、易において「国のために立ち上がる時」「神仏のご加護を得て、権威を発揮する時」を暗示する。)

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●解説 1
・「濳龍體元―洊雷應期」「聞夢歌而想纂業―投夜水而知承基」で、対句に成る。

●言葉の意味
・「洊」(正規の読み)・・・
セン、 ゼン、 ソン、 ゾン
いた(る)
しき(り)
・「洊」(正規の意味)・・・
1 いたる、水いたる(水が自然に流れてくる)。
2 しきりに、ひきつづき。
・「洊」(熟語)・・・
【洊畳】せんじよう しきりに。
【洊迫】せんぱく しきりに迫る。
【洊保】せんぽ 特別に任用する。

●解説 2(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
潜-龍體元。洊-雷應期。
・潜龍(せんりゅう)元を體(てい)し。洊雷期に應ず。
こはいまだ儲君にて坐ましゝほどを申せる賛(ホメ)詞なり。
潜龍も洊雷も易の言にて、太子のことに申せり。【洊雷は、易に洊雷-震(洊(シキリ)ニ雷震ス)とありて、震爲長子(震ハ長子ト爲(なり))といへるより出たり。洊ノ字、游と作(カケ)るは誤也。】
(意訳:これは、天武天皇がまだ皇太子でいらっしゃった時期の事を述べている文で、賛詞さんしである。
「潜龍」も「洊雷」も易で、皇太子を指す。
【「洊雷」は、易に洊雷震(しきりに雷震す))とあって、震爲長子(震ハ長子トり)との記載がある。
「洊」を「游」とする写本は写し間違いである。】
+
儲君もうけのきみ・・・
東宮とうぐう。皇太子。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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古事記(ふることふみ) 36

[キーフレーズ]
天子たるべき御子みこ

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●原文
濳龍體元

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
潜-龍體元。

●書き下し文 (本居宣長『古事記伝』より)
潜龍せんりゅう 元をていし。

●訳
潜龍せんりゅうは元を体現し、

●意訳
まだ天皇の位に就いていない天皇たるべき御子みこ大海人皇子おおあまのみこ)は、一度は皇太子の身分を御辞退なされたが、本来の運命(天皇に為られること)を体現なされ、

●言葉の意味
潜龍せんりゅう・・・
潜んでいてまだ天に上らない龍。
まだ天皇の位に就いていない天皇たるべき御子みこ
ここでは大海人皇子おおあまのみこ(後の天武天皇)を指す。
・「体」(正規の読み)・・・
タイ,テイ,からだ
・「体」(正規の意味)・・・
からだ。
自分のものとする。
本性
・「元」(正規の読み)・・・
ゲン,ガン,もと,はじ(め)
・「元」(正規の意味)・・・
もと。根本。
はじめ。最初。
かしら。あたま。
・「元」(部首)・・・

にんにょう・ひとあし
御子みこ・・・
天皇の子供を敬っていう語。

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●解説 1
・「潜龍」とは、「潜んでいる龍」のこと。
天智天皇は、大海人皇子おおあまのみこ東宮とうぐうとして扱われていたが、その後、大海人皇子は東宮の身分を御辞退なされた。その際、大海人皇子おおあまのみこは、天智天皇の周辺の人々から「翼のある虎」と呼ばれ、畏怖されていた。
・「濳龍體元―洊雷應期」「聞夢歌而想纂業―投夜水而知承基」で、対句に成っている。

●解説 2(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
潜-龍體元。
・潜龍(せんりゅう)元を體(てい)し。
こはいまだ儲君にて坐(まし)ましゝほどを申せる賛(ホメ)詞なり。
潜龍も洊雷も易の言にて、太子のことに申せり。
(意訳:これは、天武天皇がまだ皇太子でいらっしゃった時期の事を述べている文で、賛詞さんしである。
「潜龍」も「洊雷」も易で、皇太子を指す。)
+
儲君もうけのきみ・・・
東宮とうぐう。皇太子。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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《今日の言葉》
「発見する方法はシンプルです。1週間、1か月、1年と、そのことだけを考え続けるのです。そうすると見えてきます」
ニュートン

 
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古事記(ふることふみ) 35

[キーワード]
天武天皇

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●原文 1
曁飛鳥淸原大宮 御大八洲天皇御世

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
曁飛-鳥清-原大-宮。御大-八-洲天-皇御-世。

●書き下し文 1
飛鳥あすか清原きよみはら大宮おほみやに、大八洲おほやしましろしめしし天皇すめらみこと御世みよおよびて、
+
・「しろしめしし」の別の読み・・・
しら(しめしし),をさ(めたまふ)
・「およびて」の別の読み・・・
いた(りて)

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
飛鳥の清み原の大宮に。大八洲(おおやしま)御(しろしめ)しゝ天皇の御世に曁(およ)びて。

●訳
飛鳥浄御原宮あすか の きよみはら の みやを皇居として全国を統治されていた天武天皇の御世みよにおいて、

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●解説
・曁(正規の読み)・・・
キ,いた(る),およ(ぶ)
・曁(正規の意味)・・・
いたる。およぶ。日の出。日がのぼり始めるさま。
・曁(部首)・・・
「日」(ひ)
飛鳥浄御原宮あすか の きよみはら の みや・・・
「あすかきよみがはら の みや」とも言う。
672年から694年までの皇居。天武天皇と持統天皇の御世みよ
・「洲」(正規の読み)・・・
シュウ,しま,す
・「洲」(正規の意味)・・・
しま。くに。大陸。
・「州」(正規の読み)・・・
シュウ,ス,す,くに,しま
・「州」(正規の意味)・・・
しま。川の中に砂が積もってできた陸地。古代中国の行政区画。
・「御」(正規の読み)・・・
ギョ,ゴ,おん,お,おさ(める),み
・「御」(正規の意味)・・・
治める。統治する。
動物を思い通りに操る。

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・「白」(漢字の語源)
「頭の白い骨、日光、どんぐりの実」の象形。 → 「白いもの」→ 「白い」
・「匕」(正規の読み)・・・
ヒ,さじ
・「匕」(正規の意味)・・・
さじ(匕,匙)。
あいくち(匕首)。
(語源:匕首あいくちは、つばを付けず、柄口つかぐち鞘口さやぐちが合うように作られていることから、「合う口」で「合口あいくち」となった。後に中国の匕首ひしゅと混同されて、匕首ひしゅも「あいくち」と呼ぶようになった。)
(語源:かしら(持つところ)が匙に似た中国の短剣が「匕首ひしゅ」と呼ばれていた。)
・「匕」(部首)・・・
匕(ひ)
・「皀」(正規の読み)・・・
キュウ。キョウ。コウ。ヒキ。ヒョク。
・「皀」(正規の意味)・・・
かんばしい。穀物のよい香り。
ひとつぶ。穀物の一粒。
・「皀」(部首)・・・
「白」(しろ)
・「皀」(漢字の語源)・・・
「白」(白い団栗どんぐりの一粒)+「匕」(さじ)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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古事記(ふることふみ) 34

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●原文
莫不稽古以繩風猷於既頽 照今以補典教於欲絶

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
莫不稽古以縄風-猷於既頽、照今以補典-教於欲絶。

●書き下し文 1
いにしへかんがへ風猷ふういうすですたれたるにただし、今に照らして典教てんけうへむとするにおぎなはずといふことし。

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
古(いにしへ)を稽(かんがへ)て以て風猷を既に頽れたるに縄(ただし)、今を照して以て典教を絶(たへ)むと欲するに補(おぎな)はざると云(いふ)ことな(莫)し。

●訳
(いずれの天皇すめらみことも、)いにしえ聖賢せいけんの道を考えて、道がすたれてしまいそうな時にはしっかりと正され、今を省察しょうさつして、守るべき教えが絶えてしまうと感じられた時には必ず修正なされてきた。

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●言葉の意味
・「稽」(正規の読み)・・・
ケイ。とどこお(る)。とど(める)。かんが(える)。
・「稽」(正規の意味)・・・
とどこおる。とどめる。かんがえる。
・「稽」(漢字の語源)・・・
穀物の成長がいきつくところまでいって止まる。→ とどまる。→(転じて)→(動かずにじっとして)考える。
・「繩」(正規の読み)・・・
ジョウ。なわ。ただ(す)。
・「繩」(正規の意味)・・・
なわ。ただす。
・「繩」(漢字の語源)・・・
なわ。→ (転じて)→ 直線を引くための道具 →(「直線をきっちり引く」ことから意味が転じて)→法則。正す。
・「風」(正規の読み)・・・
フウ。フ。
かざ。かぜ。
すがた。
ならわし。
ふり。
・「風」(正規の意味)・・・
かぜ
すがた姿すがた。外見。様子。(意義素:外から見たものの様子)
ならわしならわし。仕来しきたり。風俗。風習。(意味素:古くから行われている物事)
ふりり。動作。所作。節回し。(例:和歌の歌いぶり
・「猷」(正規の読み)・・・
ユウ。はか(る)。はかりごと。みち。
・「猷」(正規の意味)・・・
計画。
道。道理。
・「猷」(漢字の成り立ち)・・・
「酒」と「犬」を神棚に献上して、神の御言みことを頂いたり、神前において計画を練って、神の導きに沿った計画を発案できるようにする。 → 「(神の導きに沿った)計画」・「(神の導きに沿った)道」
・「風猷」・・・
ならわし(神の御心みこころに沿った風習)とみち(神の御心みこころに沿った道)。
・「頽」(正規の読み)・・・
タイ。くずお(れる)。くず(れる)。
・「頽」(正規の意味)・・
崩れ落ちる。
衰える。
・「頽」(漢字の語源)・・・
「禾」(丸いツルツルとした粟)+「儿」(人(ひと))+「頁」(人の頭)→ 頭の禿げた人 →(意味が転じて)→ (禿げ具合が進行するにつれて)年老いていく →(意味が転じて)→ 衰頽すいたいする。衰える。
・「補」(正規の読み)・・・
ホ。おぎな(う)。
・「補」(正規の意味)・・・
補う。不足したものを埋め合わせる。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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