カテゴリー
神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ)54

【キーフレーズ】
政(まつりごと)と徳

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( 正字体・大和言葉の歴史的仮名遣いと
[現代字体・現代仮名遣い]を併記 )

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
道軼軒-后

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
道軒后に軼(す)ぎ。

●原文 2
道軼軒后
ドウ イツ ケン コウ
[ 道軼軒后
ドウ イツ ケン コウ ]

●書き下し文 2
道は軒后に軼ぎ、
みち は けんこう に すぎ
[ 道は軒后に軼ぎ、
みち は けんこう に すぎ ]

●訳 1
天武天皇の行った政道は、黄帝に優(まさ)り、

●訳 2
その道は、黄帝を越え、

●解説
・軼(読み)・・・
イツ,(す)ぎる
・軼(意味)・・・
抜きんでる。優(すぐ)れる。優(まさ)る。
・軒后(けんこう)・・・
漢民族の始祖といわれる伝説上の皇帝。
天武天皇の時代より3000年以上前に、漢民族最初の統一国家を建設したといわれている。
姓は姫、名は軒轅(けんえん)。
軒后=軒皇。

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
徳跨周-王

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
徳周王に跨(こ)えたまふ。

●原文 2
德跨周王
トク コ シュウ オウ
[ 徳跨周王
トク コ シュウ オウ ]

●書き下し文 2
德は周王に跨えたまふ。
とく は しゅうおう に こえ たまふ
[ 徳は周王に跨えたもう。
とく は しゅうおう に こえ たもう ]

●訳
徳は周王を越えている。

●解説
・周王・・・
周の文王。
仁政を行い、儒家(じゅか)の模範とされた。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

(アクセス日:2017/5/23)
・古事記をそのまま読む

(アクセス日:2017/5/23)
・南さんちの「つれづれなる記」
(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第136回)

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ)53

【キーフレーズ】
天皇に即位

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(正字体・大和言葉の歴史的仮名遣いと[現代字体・現代仮名遣い]を併記)

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
清-原大-宮

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
清み原の大宮にして

●原文 2
淸原大宮
セイ ゲン タイ グウ
[ 清原大宮
セイ ゲン タイ グウ ]

●書き下し文 2
淸原の大宮にて、
きよみはら の おほみや にて
[ 清原の大宮にて、
きよみはら の おおみや にて ]

●書き下し文 3
淸原の大宮にして、
きよみはら の おほみや にして
[ 清原の大宮にして、
きよみはら の おおみや にして ]

●訳
(大海人皇子は)飛鳥浄御原宮あすか の きよみはら の みやにおいて、

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
昇即天-位

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
昇て天位に即(つ)きたまふ。

●原文 2
昇卽天位
ショウ ソク テン イ
[ 昇即天位
ショウ ソク テン イ ]

●書き下し文 2
昇りて天位に卽きたまひき。
のぼりて あまつくらゐに つき たまひき
[ 昇りて天位に即きたまひき。
のぼりて あまつくらいに つき たまいき ]

●訳 1
即位された。

●訳 2
大海人皇子おおあまのみこ飛鳥浄御原宮あすか の きよみはら の みや)において天皇に即位された。

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●解説(本居宣長『古事記伝』より)
歳次大-梁。月踵夾-鍾。清-原大-宮。昇即天-位。
・歳大梁に次り。月夾鍾に踵(あた)りて。清み原の大宮にして。昇て天位に即(つ)きたまふ。
大梁は、十二次の内の昴宿(ボウノホシ)の次(ヤドリ)にて、昴は二十八宿の中の西ノ方の星、酉は西ノ方なればなり。
夾鐘は、十二律の中の二月の律なり。
さて書紀を考るに、此ノ天皇、癸酉ノ年二月癸未【二十七日】に御位に即(ツキ)ませり。
(意訳:
「大梁」は、十二次(じゅうにじ)の内の昴宿(ぼうのほし)の次(やど)りで、昴は二十八宿の中の西の方の星、酉は西の方角である。
夾鐘は、十二律の中の二月の律である。
日本書紀から考えて、この天皇は、癸酉ノ年二月癸未(二十七日)に御位に即位したことになる。)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ)52

[キーフレーズ]
年と月

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(正字体・歴史的仮名遣いと[現代字体・現代仮名遣い]を併記)

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
歳次大-梁

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
歳大梁に次り。

●原文 2
歲次大梁
サイ ジ タイ リヤウ
[歳次大梁
サイ ジ タイ リョウ ]

●書き下し文 2
歲、大梁に次り、
さい たいりやう に やどり
[ 歳、大梁に次り、
さい たいりょう に やどり]

●訳
そうして、酉の年、

●解説
・「歳」は歳星(さいせい)。木星の別名。
中国において、木星の公転周期12年も基(もと)にして、12年周期法(十二次 – じゅうにじ – )を用いた時代があった。
それぞれの位置に名前を付けた。「大梁(たいりょう)」はその内の一つ。
「大梁」は昴(すばる)の漢名。昴は西の方角にある。
「酉」は西の方角を表す。
木星が昴の方角に宿る年を酉年という。
つまり、「歳、大梁に次り」とは、「酉年に」という意味になる。

●解説(本居宣長『古事記伝』より)
歳次大-梁。
歳大梁に次り。
大梁は、十二次の内の昴宿(ボウノホシ)の次(ヤドリ)にて、昴は二十八宿の中の西ノ方の星、酉は酉ノ方なればなり。
(意訳;
「大梁」は、十二次(じゅうにじ)の内の昴宿(ぼうのほし)の次(やど)りで、昴は二十八宿の中の西の方の星、酉は西の方角である。)

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
月踵夾-鍾

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
月夾鍾に踵(あた)りて

●原文 2
月踵夾鐘
ゲツ シヤウ ケフ シヤウ
[ 月踵夾鐘
ゲツ ショウ キョウ ショウ]

●書き下し文 2
月、夾鐘に踵り、
つき けふしやう に あたり
[ 月、夾鐘に踵り、
つき きょうしょう に あたり ]

●訳
二月に、

●解説
・夾鐘(きょうしょう)・・・
陰暦二月の別名。

●解説(本居宣長『古事記伝』より)
月踵夾-鍾。
月夾鍾に踵(あた)りて。
夾鐘は、十二律の中の二月の律なり。
さて書紀を考るに、此ノ天皇、癸酉ノ年二月癸未【二十七日】に御位に即(ツキ)ませり。
(意訳:
夾鐘は、十二律の中の二月の律である。
日本書紀から考えて、この天皇は、癸酉ノ年二月癸未(二十七日)に御位に即位したことになる。)

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ)51

[キーフレーズ]
舞(ま)いと歌(うた)詠(よ)み

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(正字体・歴史的仮名遣いと[現代字体・現代仮名遣い]を併記)

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
巻旌戢戈

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
旌を巻き戈を戢(をさ)め

●原文 2
卷旌戢戈
クワン シヤウ シユウ クワ
[ 巻旌戢戈
カン ショウ シュウ カ ]

●書き下し文 2
旌を卷き戈を戢め
はた を まき ほこ を をさめ
[ 旌を巻き戈を戢め
はた を まき ほこ を おさめ ]

●訳 1
旗を巻き、戈(ほこ)を収めて、

●訳 2
軍旗を巻き、武器を片づけて、

●言葉の意味
・卷[ 巻 ](読み)・・・
クワン
まき,ま(く)
[ カン
まき,ま(く) ]
・旌(読み)・・・
シヤウ,セイ
あらは(す),はた
[ ショウ,セイ
あらわ(す),はた ]
・戢(読み)・・・
シユウ
をさ(める),あつ(める)
[ シュウ
おさ(める),あつ(める) ]
・戈(読み)・・・
クワ
いくさ,ほこ
[ カ
いくさ,ほこ ]

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
儛-詠停於都-邑

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
儛詠して都邑に停(とま)りたまふ。

●原文 2
儛詠停於都邑
ブ エイ テイ ヨ ト イウ
[ 儛詠停於都邑
ブ エイ テイ ヨ ト ユウ ]

●書き下し文 2
舞詠して都邑に停まりたまひき。
ぶえい して という に とどまり たまひ き
[ 舞詠して都邑に停まりたまいき。
ぶえい して とゆう に とどまり たまい き ]

●書き下し文 3
舞ひ詠ひて都邑に停まりたまひき。
まひ うたひ て という に とどまり たまひ き
[ 舞い詠いて都邑に停まりたまいき。
まい うたい て とゆう に とどまり たまい き ]

●訳 1
踊り歌い、都に滞留された。

●訳 2
戦勝を祝して舞を踊り、歌を詠んだ。そして飛鳥の都に留(とど)まられた。

●訳 3
大海人皇子(おおあまのみこ)は飛鳥の都に凱旋(がいせん)され、舞を踊り、歌を詠まれた。

●言葉の意味
・儛[ 舞 ](読み)・・・
ブ,ム
ま(ふ)、まひ、もてあそ(ぶ)
[ ブ,ム
ま(う)、まい、もてあそ(ぶ) ]
・詠(読み)・・・
エイ
よ(む) ,うた(ふ)
[ エイ
よ(む),うた(う)]
・停(読み)・・・
テイ
とど(まる),と(まる)
[ テイ
とど(まる),と(まる) ]
・於(読み)・・・
ヲ,ヨ
を(ひて)
[ オ,ヨ
お(いて) ]
・都(読み)・・・
ト,ツ
みやこ
[ ト,ツ
みやこ ]
・邑(読み)・・・
ワウ,イウ
くに,みやこ,むら
[ オウ,ユウ
くに,みやこ,むら ]

●解説
都邑・・・
都(みやこ)。ここでは飛鳥の都を指す。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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古事記(ふることふみ) 50

[キーフレーズ]
大海人皇子軍の帰国

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(正字体・歴史的仮名遣いと[現代字体・現代仮名遣い]を併記)

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
愷-悌帰於華夏

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
愷悌して華夏に帰り

●原文 2
愷悌歸於華夏
グワイ テイ キ ヨ クワ クワ
[ 愷悌帰於華夏
ガイ テイ キ ヨ カ カ ]

●書き下し文 2
愷悌して華夏に歸り、
ぐわいてい して くわくわ に かへり
[ 愷悌して華夏に帰り、
がいてい して かか に かえり ]

●訳 1
大海人皇子軍は飛鳥(あすか)に凱旋(がいせん)し、

●訳 2
戦(いくさ)が終わり、緊張感も解けて安堵した気持ちになり、大和国(やまとのくに)に帰り、

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●言葉の意味
・愷(読み)・・・
クワイ,グワイ
やす(らか),たの(しむ)
[ カイ,ガイ
やす(らか),たの(しむ) ]
・悌(読み)・・・
ダイ,テイ
・歸[ 帰 ](読み)・・・

かへ(る)
[ キ
かえ(る) ]
・於(読み)・・・
ヲ,ヨ
を(ひて)
[ オ,ヨ
お(いて) ]
・華(読み)・・・
クワ,ケ
はな
[ カ,ケ
はな ]
・夏(読み)・・・
クワ,ゲ
なつ
[ カ,ゲ
なつ ]

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●用語の意味
・愷悌・・・
穏やかで安らいでいるさま。
・華夏・・・
①唐土(もろこし)。
②都。

●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
乃放牛息馬。愷-悌帰於華夏。
・乃(すなは)ち牛を放ち馬を息(いこ)へ。愷悌して華夏に帰り。
放牛息馬とは、から國の周ノ武王が紂に勝(カチ)て後に、馬を崋山の南に帰(カヘ)し、牛を桃林の野に放チて、再服(フタゝビツカ)はぬことをしらせし故事(フルコト)なり。
(意訳:
「放牛息馬」とは、周の武王が紂に勝利した後、馬を崋山の南方に帰し、牛を桃林の野に放って、二度と使わないことを民に知らせた故事からきている。)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 49

〈 キーフレーズ 〉
大海人皇子軍の勝利

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(正字体と現代字体,歴史的仮名遣いと現代仮名遣いを併記)

●原文(本居宣長『古事記伝』より)
乃放牛息馬
ナイ ハウ ギウ ソク バ
[ 乃放牛息馬
ナイ ホウ ギュウ ソク バ ]

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
乃(すなは)ち牛を放ち馬を息(いこ)へ

●書き下し文 2
乃ち、牛を放ち馬を息へて、
すなはち うし を はなち うま を いこへて
[ すなわち うし を はなち うま を いこえて ]

●書き下し文 3
乃ち、牛を放ち、馬を息め、
すなはち うし を はなち うま を やすめ
[ すなわち うし を はなち うま を やすめ ]

●書き下し文 4
乃ち、放牛、息馬し、
すなはち はうぎう そくばし
[ すなわち ほうぎゅう そくばし ]

●訳 1
牛を放ち、馬を休ませ、

●訳 2
その後、牛馬を放ち、休息させ、

●訳 3
戦(いくさ)で使った牛馬を休ませ、

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●言葉の意味
・乃(読み)・・・
ダイ,ナイ
すなは(ち),なんぢ,の
[ ダイ,ナイ
すなわ(ち),なんじ,の ]
・放(読み)・・・
ハウ
はな(つ),はふ(る)
[ ホウ
はな(つ),ほう(る)]
・牛(読み)・・・
ギウ,ゴ
うし
[ ギュウ,ゴ
うし ]
・息(読み)・・・
ソク
いき,いこ(ふ),やす(む)
[ ソク
いき,いこ(う),やす(む)]
・馬(読み)・・・
バ,マ,メ
むま
[ バ,マ,メ
うま ]

●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
・乃(すなは)ち牛を放ち馬を息(いこ)へ。
放牛息馬とは、から國の周ノ武王が紂に勝(カチ)て後に、馬を崋山の南に帰(カヘ)し、牛を桃林の野に放チて、再服(フタゝビツカ)はぬことをしらせし故事(フルコト)なり。
(意訳:
「放牛息馬」とは、唐土(もろこし)の周の武王が紂に勝利した後、馬を崋山の南に帰し、牛を桃林の野に放って、再び使用しないことを民衆に知らせた故事からきている。)

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
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・古事記をそのまま読む

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古事記(ふることふみ) 48

[キーフレーズ]
気の清浄(せいじょう)

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(正字体と現代字体,歴史的仮名遣いと現代仮名遣いを併記)

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
未移浹-辰

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
未だ浹辰を移さずして。

●原文 2
未移浹辰
ミ イ セフ シン
[ミ イ ショウ シン]

●書き下し文 2
未(いま)だ浹辰(せふしん)を移(うつ)さずして、
[未(いま)だ浹辰(しょうしん)を移(うつ)さずして、]

●訳 1
12日間も経(た)たぬうちに、

●訳 2
短期間のうちに、

●解説
・浹辰
十二支が一巡(ひとめぐ)りする十二日間。

●言葉の意味
・未(読み)・・・
ミ,ビ
いま(だ),ひつじ,ま(だ)
・移(読み)・・・

うつ(す),うつ(る)
・浹(読み)・・・
セフ[ショウ]
あまね(し),うるほ(ふ)[うるお(う)],うるほ(す)[うるお(す)],とお(る),めぐ(る)
・浹(意味)・・・
①浹(あまね)し。広く行き渡る。全体に行き渡る。
②浹(うるお)う。浹(うるお)す。水が全体に行き渡る。
③浹(とお)る。貫通する。
④浹(めぐ)る。一巡(ひとめぐ)りする。一回(ひとまわ)りする。
・辰(読み)・・・
シン
たつ,とき,ひ

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
氣-沴自-清。

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
氣沴自(おのづから)清まりぬ。

●原文 2
氣沴自淸
キ レイ ジ シャウ
[気沴自清
キ レイ ジ ショウ]

●書き下し文 2
氣沴(きれい)自(おのづか)ら淸(きよ)まりぬ。
[気沴(きれい)自(おのずか)ら清(きよ)まりぬ。]

●訳
悪い気は清められた。

●解説
・氣沴(気沴)・・・
悪い気。沴気(れいき)。

●言葉の意味
・氣(気)(読み)・・・
キ,ケ
いき
・沴(読み)・・・
レイ,ライ,テン,デン
もこ(なふ)[もこ(なう)],そこ(なふ)[そこ(なう)]
・自(読み)・・・
シ,ジ
みづか(ら)[みずか(ら)],おのづか(ら)[おのずか(ら)],よ(り)
・淸(清)(読み)・・・
セイ,シャウ[ショウ],シン
きよ(い),きよ(まる),きよ(める),さや(か),す(む)

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●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
未移浹-辰。氣-沴自-清。
・未だ浹辰を移さずして。氣沴自(おのづから)清まりぬ。
是(コ)は仇速(スミヤカ)に亡(ホロ)びて、天ノ下治まりしを云るなり。
浹辰は、子(ネ)より亥(ヰ)まで一周(ヒトメグリ)の日數【十二日】にて、其(ソ)を移(ウツ)さずとは、ほどもなくすみやかなる意なり。
沴は妖氣なり。此ノ悪(ワロ)い氣去リて、清らかになれりとなり。
さて此ノ沴ノ字、諸ノ本並(トモ)に弥と作(カケ)り、今は延佳が考ヘによりて改めつ。
(意訳:
ここは、短期間にうちに敵が敗北し、天下が治まったことを述べている。
「浹辰」は子(ね)の日から亥(ゐ)の日までの一巡(ひとめぐ)りの日数(12日間)のことで、「浹辰を移さず」とは、「程無(ほどな)く速(すみ)やかに」の意味である。
「沴」は妖気のことである。悪い気が去って、清らかになったという意味である。
「沴」が「弥」となっている写本もあるが、ここでは延佳の考証に従った。)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 47

[キーフレーズ]
大海人皇子軍の勝利

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(現代字体と正字体,現代仮名遣いと歴史的仮名遣いを併記)

●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
絳-旗耀兵。

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
絳旗兵を耀して。

●原文 2
絳旗耀兵
カウキ ヤウヘイ
コウキ ヨウヘイ

●書き下し文 2
絳旗(かうき)兵(つはもの)を耀(かがや)かして、

●訳
赤い旗が兵士を輝かせて、

●解説
大海人皇子軍を象徴する色は赤だったことが日本書紀に記されている。

●言葉の意味(「読み」には歴史的仮名遣いも併記)
・絳(読み)・・・
コウ・カウ
あか,あか(い)
・旗(読み)・・・

はた
・耀(読み)・・・
ヨウ・ヤウ
かがや(く)
・兵(読み)・・・
ヘイ,ヒョウ
いくさ,つわもの・つはもの

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
凶-徒瓦-解

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
凶徒瓦の如く解けつ。

●原文 2
凶徒瓦解
キヨウト グワカイ
キョウト ガカイ

●書き下し文 2
凶徒(きようと・きょうと)、瓦(かはら・かわら)のごとく解(と)けぬ。

●書き下し文 3
凶徒(きようと・きょうと)、瓦解(ぐわかい・がかい)す。

●訳
近江朝は完全に崩れ去った。

●解説
・外国(唐土 – もろこし – )の文化を重んじる集団と日本の伝統文化を重んじる集団との戦い。
・「瓦解」・・・
大友皇子が完全に敗北したことを記す。

●言葉の意味(「読み」には歴史的仮名遣いも併記)
・凶(読み)・・・
キョウ
おそ(れる),わざわ(い),わる(い)
・徒(読み)・・・
ト,ズ
あだ,いたずら(に),かち,ただ,ともがら,むだ
・瓦(読み)・・・
ガ,かわら・かはら,かわらけ・かはらけ
グラム
・解(読み)・・・
カイ,ゲ
と(く),さと(る),ほぐ(れる),ほつ(れる),ほど(く),わか(る)

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●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
杖-矛擧威。猛-士烟-起。絳-旗耀兵。凶-徒瓦-解。
・杖矛威を擧て。猛士烟の如く起り。絳旗兵を耀して。凶徒瓦の如く解けつ。
上三句は御方の軍のさかりなるさま、下一句は近海(アフミ)の軍の敗れしさまなり。
(意訳:
上三句は大海人皇子軍の勢いが増しているさま、下一句は大友皇子軍が敗北したさまを記している。)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

(アクセス日:2017/3/20)
・古事記をそのまま読む

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 46

[キーセンテンス]
勢いの増す大海人皇子軍

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
杖-矛擧威

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
杖矛威を擧て

●原文 2
杖矛擧威
ヂヤウバウ キョヰ

●書き下し文 2
杖矛(ぢやうばう・ぢゃうばう)威(ゐ)を擧(あ)げて

●言葉の意味(「読み」には歴史的仮名遣いも併記)
・杖(読み)・・・
ジョウ・ぢゃう・ぢやう
つえ・つゑ
・矛(読み)・・・
ム,ボウ・バウ
ほこ
・擧[挙](読み)・・・
キョ
あ(がる),あ(げる),こぞ(って),こぞ(る)
・威(読み)・・・
イ・ゐ
おど(す)
・「ゐ・ヰ」・・・
わ行い段

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
猛-士烟-起。

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
猛士烟の如く起り。

●原文 2
猛士烟起
マウシ ヱンキ

●書き下し文 2
猛士(まうし)煙起(ゑんき)し、

●書き下し文 3
猛(たけ)き士(さむらひ)烟(けぶり)ごとく起(お)こり、

●言葉の意味(「読み」には歴史的仮名遣いも併記)
・猛(読み)・・・
モウ・マウ
たけ(し)
・士(読み)・・・

さむらい・さむらひ
・烟(読み)・・・
エン・ヱン
けむ(い),けむり,けむ(る),けぶ(る),けむ
・起(読み)・・・

お(きる),お(こす),お(こる),た(つ)
・「猛士」・・・
勇猛な兵士。
・「ゑ・ヱ」・・・
わ行え段

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●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
杖-矛擧威。猛-士烟-起。
・杖矛威を擧て。猛士烟の如く起り。
御方の軍のさかりなるさまなり。
(意訳:
大海人皇子の軍が勢いを増している様子が記されている。)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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古事記(ふることふみ) 45

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進軍

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●原文
六師雷震
リクシ ライシン

●書き下し文
六師(りくし)雷(いかづち)のごとく震(ふる)ひ、

●解説
・六師(りくし)・・・
天子の軍。

●言葉の意味
・六(正規の読み)・・・
ロク,リク
む,むい,む(つ),むっ(つ)
・師(正規の読み)・・・

いくさ,みやこ
・雷(正規の読み)・・・
ライ
かみなり,いかずち
・震(正規の読み)・・・
シン
ふる(う),ふる(える)

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●原文
三軍電逝
サングン デンセイ

●書き下し文
三軍(さんぐん)電(いなづま)のごとく逝(ゆ)きき。

●言葉の意味
・三(正規の読み)・・・
サン
み,み(つ),みっ(つ)
・軍(正規の読み)・・・
グン,クン
いくさ,つわもの
・電(正規の読み)・・・
デン,テン
いなずま
・逝(正規の読み)・・・
セイ
い(く),ゆ(く)

●解説
・三軍・・・
諸侯の軍。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
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