カテゴリー
神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 44

[キーフレーズ]
大海人皇子(おおあまのみこ)の進軍

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●原文 1
淩渡山川
リョウ ト サン セン

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
淩-渡山-川

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
山川を淩渡り

●書き下し文 2
山川(さんせん)を淩渡(りょうと)し

●訳 1
山を越え川を渡り、

●訳 2
山や川をおし渡り、

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●解説 1(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
淩は歴也と註せり。
【汎海淩山(海に汎山を淩)など云り。
延佳本に凌と作(カケ)るは誤なり。】
(意訳:
「淩」は「歴也」(「経る」の意)との註がある。
【汎海淩山 <海に汎(う)かび、山を淩(りょう)す>などと言う。
延佳本の「凌」は誤りである。】)

●言葉の意味
・淩(正規の読み)・・・
リョウ
の(る)
・渡(正規の読み)・・・

わた(す),わた(る)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

(アクセス日:2017/3/6)
・古事記をそのまま読む

(アクセス日:2017/3/6)
・南さんちの「つれづれなる記」
(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第133回)

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《今日の言葉》
次の二つは軽視してはならない。
第一は、寛容と忍耐で接しても、人間の敵意は溶解しない。
第二は、金銭などの援助を与えても、敵対関係は好転しない。
(マキャヴェリ)

 
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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 42

[キーフレーズ]
関ケ原

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
虎-歩於東國
コホ ヨ トウゴク

●書き下し文 1(本居宣長『古事記伝』より)
東國(とうごく)に虎の如(ごと)く歩みたまひき

●解説 1(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
人事共洽。虎-歩於東國。
人事共に洽(あま)ねくして。東國に虎の如く歩みたまひき。
道より人多(サハ)に従ひ附キ奉て、御威(ミイキホヒ)さかりになりまして、美濃ノ国に幸行(イデマシ)しことなり。
皆書紀に見ゆ。
(意訳:
多くの豪族が大海人皇子(おおあまのみこ)に付き従い、御威光(ごいこう)も盛んになられ、美濃國(みののくに)にお入りなられた。
日本書紀に記載あり。)

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●原文 2
虎步於東國

●書き下し文 2
東國(あづまのくに)に虎歩む。

●解説 2
・然「天時未臻蟬蛻於南山―人事共給虎步於東國」で、対句構造。
「天」「人」、「蝉」「虎」、「南」「東」をそれぞれ交換による同位性を持たせて、対句構造を整備させている。
・虎步・・・
日本書紀には、大海人皇子(おおあまのみこ)が出家して吉野山に移った時、「虎に翼を付けて之(これ)を放てり」とある。
天智天皇崩御の後、豪族を味方につけ、東国(関ケ原付近)に向かって進軍を開始した。
・東國・・・
この時代の「東國」というと、不破の関(岐阜県関ケ原付近)より東全部を指した。

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第133回)

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《今日の言葉》
「天の下のすべてのことには季節があり、すべてのわざには時がある」
ユダヤ教聖書

 
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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 41

[キーフレーズ]
壬申の乱

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●原文 1(本居宣長『古事記伝』より)
人事共洽

●書き下し文(本居宣長『古事記伝』より)
人事共に洽(あま)ねくして

●訳
人の勢いも、天の時も、多いに満ち、

●言葉の意味
・洽(正規の読み)・・・
コウ,あまね(し),うるお(う),うるお(す)
・洽(正規の意味)・・・
広くゆきわたっている。全体を覆(おお)っている。
うるおう。うるおす。
・天の時・・・
神々からの導きによる、戦いの開始時期の到来。

●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
人事共洽。虎-歩於東國。
人事共に洽(あま)ねくして。東國に虎の如く歩みたまひき。
道より人多(サハ)に従ひ附キ奉て、御威(ミイキホヒ)さかりになりまして、美濃ノ国に幸行(イデマシ)しことなり。
皆書紀に見ゆ。
洽ノ字、延佳本には給と作(カケ)り。それもあしからず。
(意訳:
多くの豪族が大海人皇子(おおあまのみこ)に付き従い、御威光(ごいこう)も盛んになられ、美濃國(みののくに)にお入りなられた。
日本書紀に記載あり。
延佳本では「洽」を「給」としている。それでも意味は通じる。)

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●原文 2
人事共給

●書き下し文
人事(ひとこと)共に給(そな)はり

●訳
人と事が共に備わり、

●意訳
多くの人々を味方につけ、天の時も至り、

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第133回)

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《今日の言葉》
「才能は学ぶことで開花する」

 
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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 40

[キーフレーズ]
天武天皇

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●原文 (本居宣長『古事記伝』より)
然天時未臻。

●書き下し文 1
然れども天(てん)の時(とき)、未(いま)だ臻(いた)らず、

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
然れども天の時未だ臻(いたら)ざりしかば。

●訳 1
然しながら、天の時は未だ至っておらず

●訳 2
然しながら、天子となるべき時期は未だ至っておらず

●解説
・天の時・・・
天上界の神の導きにより、大海人皇子(おおあまのみこ)が天皇(すみらみこと)となる時期。

●言葉の意味
・「臻」(部首)

いたる
・「臻」(正規の読み)・・・
シン
いた(る),きた(る),おお(い)
・「臻」(正規の意味)・・・
いたる。
きたる。
おおい。

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●原文 (本居宣長『古事記伝』より)
蝉蛻於南山。

●書き下し文 1
南山(なんざん)に於(お)いて蝉蛻(せんぜい)せられ、

●書き下し文 3(本居宣長『古事記伝』より)
南山に蝉の如く蛻(もぬ)けたまひ。

●訳 1
吉野山に入り、迷いを捨て戦う決意をなされ、

●訳 2
吉野(よしのやま)の地で、天子となるべく戦う決意をなされ、

●訳 3
吉野山に入って衣服を変えてお隠れになり、

●言葉の意味
・「蛻」(正規の読み)・・・
セイ,ゼイ
ぬけがら,もぬけ,もぬけ(る)
・「蛻」(正規の意味)・・・
ぬけがら。もぬけ。
もぬける。外皮を脱ぐ。

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●解説(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
然天時未臻。蝉-蛻於南山。人事共洽。虎-歩於東國。
・然れども天の時未だ臻(いたら)ざりしかば。南山に蝉の如く蛻(もぬ)けたまひ。
京師(けいし)をのがれ出(いで)て、吉野山(よしのやま)に入(い)リ坐(ま)シしことなり。
皆書紀に見ゆ。
(意訳:
都(みやこ)を遁(のが)れ、吉野山(よしのやま)にお入りになられたことを記している。
すべて日本書紀に記されている。)
+
・「京師(けいし)」・・・
都。ここでは天智天皇が遷都なされた大津宮(おおつのみや)のこと。
・「南山」・・・
大津宮から南に位置する吉野山のこと。
・座(ま)す・・・
補助動詞
お…になる。
・入(い)り座(ま)す・・・
お入りになる。

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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古事記(ふることふみ) 39

[キーワード]
神示しんじ

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●原文 (本居宣長『古事記伝』より)
投夜水而知承基。

●書き下し文 1
よるみづいたりてもとゐけむことをろしめす。

●書き下し文 2
みづくくりて[而]もとけむと知る。

●書き下し文 3(本居宣長『古事記伝』より)
夜の水に投(いた)りて基を承むことを知(しろ)しめす。

●意訳
東國に御下りなさる途上で、夜中に伊賀のなばり横河よこかわに御到着なさった。
この時、広さ十丈余りの黒雲が現れ、空をおおったので、尋常ではないとお思いになり、占われたところ、「天下が分かれるが、最終的には大海人皇子おおあまのみこが天下を掌握なされる」という結果が出た。
+
・「水」・・・
「横河」を指す。現在の名張川?
・「投(いた)る」・・・
到着する。
・「基」・・・
日本の土台となること、すなわち、天皇の位に就くこと。
・「ろしめす」・・・
「知る」の尊敬語。

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●言葉の意味
・「基」(正規の読み)・・・

もと,もとい,もと(づく)
・「基」(正規の意味)・・・
1 もと。もとい。建物の土台。「基礎」
2 もと。もとい。物事の土台。根本。物事が成り立っている基礎になるもの。「基本」
3 基づく。根拠とする。拠り所(よりどころ)とする。「基因」
・「坐」(正規の読み)・・・
いなが(ら),いま(す),おわ(す),すわ(る),そぞろ(に),ましま(す)
・「承」(正規の読み)
ショウ
うけたまわ(る),う(ける)

●解説 1
・「濳龍體元―洊雷應期」「聞夢歌而想纂業―投夜水而知承基」で、対句に成る。

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●解説 2(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
聞夢歌而想纂業。投夜水而知承基。
・夢の歌を聞(きき)て業を纂むことを想ひ。夜の水に投(いた)りて基を承むことを知(しろ)しめす。
此は天津日嗣しろしめすべきさとしの有しことなり。
夢ノ歌の事は書紀に見えず。漏(モレ)つるなるべし。
投夜水(夜ノ水ニ投ル)とは、東國に下り坐サむとして、夜中(サヨナカ)に伊賀の隠(ナバリ)の横河(ヨクカハ)に至リ坐シしことなるべし。
此時に廣さ十餘丈(トツヱノマリ)の黒雲おこりて、天にわたりければ、異(アヤ)しとおもほして、御自占(ミゝヅカラウラ)へ賜ふに、天ノ下二ツに分れて、つひにはみな得たまふべき祥(サガ)なりしこと、書紀に見えたり。
【聞ノ字、開と作(カケ)るは誤なり。今は一本に依ル。】
(意訳:
此の文は、天皇の位を継承せよとの神のお告げが有ったことを述べている。
「投夜水」(夜ノ水ニいたる))とは、「東國に御下りなさる途上で、夜中に伊賀のなばり横河よこかわに御到着なさった。
この時、広さ十丈余りの黒雲が現れ、空をおおったので、尋常ではないとお思いになり、占われたところ、天下が分かれるが、最終的には大海人皇子が天下を掌握なされるという結果が出た」と、『日本書紀』には記されている。
【「聞」が「開」となっている写本は、誤って書き写されたものと考えられ、ここでは「聞」を採択する。】

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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・古事記をそのまま読む

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古事記(ふることふみ) 37

[キーワード]
天武天皇

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●原文 1
洊雷應期

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
洊-雷應期。

●書き下し文 1
洊雷せむらい おうず。

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
洊雷期に應ず。

●意訳 1
大海人皇子おおあまのみこは天子(天皇)となる時期を迎えられた。
(本居宣長の説では、易において「洊雷」は「太子」(天皇となるべき皇太子)を意味する。)

●意訳 2
易経でいう、「洊雷震」(しきりに雷震す))の時期を迎えた。
(「洊雷震」は、易において「国のために立ち上がる時」「神仏のご加護を得て、権威を発揮する時」を暗示する。)

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●解説 1
・「濳龍體元―洊雷應期」「聞夢歌而想纂業―投夜水而知承基」で、対句に成る。

●言葉の意味
・「洊」(正規の読み)・・・
セン、 ゼン、 ソン、 ゾン
いた(る)
しき(り)
・「洊」(正規の意味)・・・
1 いたる、水いたる(水が自然に流れてくる)。
2 しきりに、ひきつづき。
・「洊」(熟語)・・・
【洊畳】せんじよう しきりに。
【洊迫】せんぱく しきりに迫る。
【洊保】せんぽ 特別に任用する。

●解説 2(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
潜-龍體元。洊-雷應期。
・潜龍(せんりゅう)元を體(てい)し。洊雷期に應ず。
こはいまだ儲君にて坐ましゝほどを申せる賛(ホメ)詞なり。
潜龍も洊雷も易の言にて、太子のことに申せり。【洊雷は、易に洊雷-震(洊(シキリ)ニ雷震ス)とありて、震爲長子(震ハ長子ト爲(なり))といへるより出たり。洊ノ字、游と作(カケ)るは誤也。】
(意訳:これは、天武天皇がまだ皇太子でいらっしゃった時期の事を述べている文で、賛詞さんしである。
「潜龍」も「洊雷」も易で、皇太子を指す。
【「洊雷」は、易に洊雷震(しきりに雷震す))とあって、震爲長子(震ハ長子トり)との記載がある。
「洊」を「游」とする写本は写し間違いである。】
+
儲君もうけのきみ・・・
東宮とうぐう。皇太子。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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古事記(ふることふみ) 36

[キーフレーズ]
天子たるべき御子みこ

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●原文
濳龍體元

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
潜-龍體元。

●書き下し文 (本居宣長『古事記伝』より)
潜龍せんりゅう 元をていし。

●訳
潜龍せんりゅうは元を体現し、

●意訳
まだ天皇の位に就いていない天皇たるべき御子みこ大海人皇子おおあまのみこ)は、一度は皇太子の身分を御辞退なされたが、本来の運命(天皇に為られること)を体現なされ、

●言葉の意味
潜龍せんりゅう・・・
潜んでいてまだ天に上らない龍。
まだ天皇の位に就いていない天皇たるべき御子みこ
ここでは大海人皇子おおあまのみこ(後の天武天皇)を指す。
・「体」(正規の読み)・・・
タイ,テイ,からだ
・「体」(正規の意味)・・・
からだ。
自分のものとする。
本性
・「元」(正規の読み)・・・
ゲン,ガン,もと,はじ(め)
・「元」(正規の意味)・・・
もと。根本。
はじめ。最初。
かしら。あたま。
・「元」(部首)・・・

にんにょう・ひとあし
御子みこ・・・
天皇の子供を敬っていう語。

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●解説 1
・「潜龍」とは、「潜んでいる龍」のこと。
天智天皇は、大海人皇子おおあまのみこ東宮とうぐうとして扱われていたが、その後、大海人皇子は東宮の身分を御辞退なされた。その際、大海人皇子おおあまのみこは、天智天皇の周辺の人々から「翼のある虎」と呼ばれ、畏怖されていた。
・「濳龍體元―洊雷應期」「聞夢歌而想纂業―投夜水而知承基」で、対句に成っている。

●解説 2(本居宣長『古事記伝』より)(上の原文と無関係な箇所は省略)
潜-龍體元。
・潜龍(せんりゅう)元を體(てい)し。
こはいまだ儲君にて坐(まし)ましゝほどを申せる賛(ホメ)詞なり。
潜龍も洊雷も易の言にて、太子のことに申せり。
(意訳:これは、天武天皇がまだ皇太子でいらっしゃった時期の事を述べている文で、賛詞さんしである。
「潜龍」も「洊雷」も易で、皇太子を指す。)
+
儲君もうけのきみ・・・
東宮とうぐう。皇太子。

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《今日の言葉》
「発見する方法はシンプルです。1週間、1か月、1年と、そのことだけを考え続けるのです。そうすると見えてきます」
ニュートン

 
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古事記(ふることふみ) 35

[キーワード]
天武天皇

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●原文 1
曁飛鳥淸原大宮 御大八洲天皇御世

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
曁飛-鳥清-原大-宮。御大-八-洲天-皇御-世。

●書き下し文 1
飛鳥あすか清原きよみはら大宮おほみやに、大八洲おほやしましろしめしし天皇すめらみこと御世みよおよびて、
+
・「しろしめしし」の別の読み・・・
しら(しめしし),をさ(めたまふ)
・「およびて」の別の読み・・・
いた(りて)

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
飛鳥の清み原の大宮に。大八洲(おおやしま)御(しろしめ)しゝ天皇の御世に曁(およ)びて。

●訳
飛鳥浄御原宮あすか の きよみはら の みやを皇居として全国を統治されていた天武天皇の御世みよにおいて、

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●解説
・曁(正規の読み)・・・
キ,いた(る),およ(ぶ)
・曁(正規の意味)・・・
いたる。およぶ。日の出。日がのぼり始めるさま。
・曁(部首)・・・
「日」(ひ)
飛鳥浄御原宮あすか の きよみはら の みや・・・
「あすかきよみがはら の みや」とも言う。
672年から694年までの皇居。天武天皇と持統天皇の御世みよ
・「洲」(正規の読み)・・・
シュウ,しま,す
・「洲」(正規の意味)・・・
しま。くに。大陸。
・「州」(正規の読み)・・・
シュウ,ス,す,くに,しま
・「州」(正規の意味)・・・
しま。川の中に砂が積もってできた陸地。古代中国の行政区画。
・「御」(正規の読み)・・・
ギョ,ゴ,おん,お,おさ(める),み
・「御」(正規の意味)・・・
治める。統治する。
動物を思い通りに操る。

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・「白」(漢字の語源)
「頭の白い骨、日光、どんぐりの実」の象形。 → 「白いもの」→ 「白い」
・「匕」(正規の読み)・・・
ヒ,さじ
・「匕」(正規の意味)・・・
さじ(匕,匙)。
あいくち(匕首)。
(語源:匕首あいくちは、つばを付けず、柄口つかぐち鞘口さやぐちが合うように作られていることから、「合う口」で「合口あいくち」となった。後に中国の匕首ひしゅと混同されて、匕首ひしゅも「あいくち」と呼ぶようになった。)
(語源:かしら(持つところ)が匙に似た中国の短剣が「匕首ひしゅ」と呼ばれていた。)
・「匕」(部首)・・・
匕(ひ)
・「皀」(正規の読み)・・・
キュウ。キョウ。コウ。ヒキ。ヒョク。
・「皀」(正規の意味)・・・
かんばしい。穀物のよい香り。
ひとつぶ。穀物の一粒。
・「皀」(部首)・・・
「白」(しろ)
・「皀」(漢字の語源)・・・
「白」(白い団栗どんぐりの一粒)+「匕」(さじ)

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 34

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●原文
莫不稽古以繩風猷於既頽 照今以補典教於欲絶

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
莫不稽古以縄風-猷於既頽、照今以補典-教於欲絶。

●書き下し文 1
いにしへかんがへ風猷ふういうすですたれたるにただし、今に照らして典教てんけうへむとするにおぎなはずといふことし。

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
古(いにしへ)を稽(かんがへ)て以て風猷を既に頽れたるに縄(ただし)、今を照して以て典教を絶(たへ)むと欲するに補(おぎな)はざると云(いふ)ことな(莫)し。

●訳
(いずれの天皇すめらみことも、)いにしえ聖賢せいけんの道を考えて、道がすたれてしまいそうな時にはしっかりと正され、今を省察しょうさつして、守るべき教えが絶えてしまうと感じられた時には必ず修正なされてきた。

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●言葉の意味
・「稽」(正規の読み)・・・
ケイ。とどこお(る)。とど(める)。かんが(える)。
・「稽」(正規の意味)・・・
とどこおる。とどめる。かんがえる。
・「稽」(漢字の語源)・・・
穀物の成長がいきつくところまでいって止まる。→ とどまる。→(転じて)→(動かずにじっとして)考える。
・「繩」(正規の読み)・・・
ジョウ。なわ。ただ(す)。
・「繩」(正規の意味)・・・
なわ。ただす。
・「繩」(漢字の語源)・・・
なわ。→ (転じて)→ 直線を引くための道具 →(「直線をきっちり引く」ことから意味が転じて)→法則。正す。
・「風」(正規の読み)・・・
フウ。フ。
かざ。かぜ。
すがた。
ならわし。
ふり。
・「風」(正規の意味)・・・
かぜ
すがた姿すがた。外見。様子。(意義素:外から見たものの様子)
ならわしならわし。仕来しきたり。風俗。風習。(意味素:古くから行われている物事)
ふりり。動作。所作。節回し。(例:和歌の歌いぶり
・「猷」(正規の読み)・・・
ユウ。はか(る)。はかりごと。みち。
・「猷」(正規の意味)・・・
計画。
道。道理。
・「猷」(漢字の成り立ち)・・・
「酒」と「犬」を神棚に献上して、神の御言みことを頂いたり、神前において計画を練って、神の導きに沿った計画を発案できるようにする。 → 「(神の導きに沿った)計画」・「(神の導きに沿った)道」
・「風猷」・・・
ならわし(神の御心みこころに沿った風習)とみち(神の御心みこころに沿った道)。
・「頽」(正規の読み)・・・
タイ。くずお(れる)。くず(れる)。
・「頽」(正規の意味)・・
崩れ落ちる。
衰える。
・「頽」(漢字の語源)・・・
「禾」(丸いツルツルとした粟)+「儿」(人(ひと))+「頁」(人の頭)→ 頭の禿げた人 →(意味が転じて)→ (禿げ具合が進行するにつれて)年老いていく →(意味が転じて)→ 衰頽すいたいする。衰える。
・「補」(正規の読み)・・・
ホ。おぎな(う)。
・「補」(正規の意味)・・・
補う。不足したものを埋め合わせる。

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《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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・古事記をそのまま読む

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・南さんちの「つれづれなる記」
(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第130回)

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カテゴリー
神話【かみかたり】(神話)

古事記(ふることふみ) 33

[キーフレーズ]
それぞれの色

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●原文 1
雖 步驟各異 文質不同

●原文 2(本居宣長『古事記伝』より)
雖歩-驟各異。文-質不同。

●書き下し文 1
あゆみはしり おのおの ことにし、あやたちおなじからざると雖(いへどいえど)も、
(「歩驟」の読み方は、「ほしゅう」、「あゆみはしり」。)
(「各」の読み方は、「おのおの」、「おのもおのも」。)
(「文質」の読み方は、「ぶんしつ」、「あやたち」、「あやしろ」。)

●書き下し文 2(本居宣長『古事記伝』より)
歩驟(ほしゅう)各異(こと)に。文質同(おなじ)からざると雖(いへども)。

●訳
進む速さはそれぞれ異なり、文化の質は同じではないが、

●意訳 1
各々おのおの天皇すめらみことで、治政ちせい緩急かんきゅうことなっていたり、はなやかさや素朴そぼくさに違いはあるが、

●意訳 2
それぞれの天皇すめらみこと御世みよにおいて、発展の速度や文化の質はことなるが、

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●言葉の意味
・「雖」の正式な読み・・・
スイ。いえど(も)。
・「驟」の正式な読み・・・
シュウ。しばしば。にわ(か)。はし(る)。はや(い)
・「驟」の正式な意味・・・
早く走る。
・「歩驟(ほしゅう)」の意味・・・
歩きと走り → 遅と速 → 緩急。
・「各」の正式な読み
カク。おのおの。
・「質」の正式な読み・・・
シツ。シチ。ただ(す)。たち。もと。
・「質」の正式な意味・・・
本来の内容。生まれつき。ありのまま。ただす。

 
《参考文献等》
・次田真幸(1977)『古事記』講談社学術文庫
・『中杉 弘のブログ』

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・古事記をそのまま読む

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(本居宣長大人著『古事記伝』を読んでみよう:第130回)

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《今日の言葉》
「学べば学ぶほど、自分の無知に気づく。
気づけば気づくほど、また学びたくなる」
アインシュタイン
(ドイツの物理学者)
(1879~1955)