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文花【あやはな】(文学)

源氏物語 若菜(わかな) 11

(正字体と現代字体,歴史的仮名遣いと現代仮名遣いを併記)

[キーフレーズ]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)の周辺

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●原文
大后の、尚侍を参らせたてまつりたまひて、
おほきさい の ないしのかむ を まゐらせ たてまつり たまひて
[ 大后の、尚侍を参らせたてまつりたまいて、
おおきさい の ないしのかみ を まいらせ たてまつり たまいて ]

●原文に漢字を付加
大后の、尚侍を参らせ奉り給ひて、

●訳 1
大后が尚侍の君(かんのきみ)をお入れ申し上げなさって、

●訳 2
弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)が朧月夜を入内(じゅだい)させ申し上げなさって、

●解説
・大后・・・
弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)。桐壺帝の妃。朱雀帝の母。
・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)・・・
桐壺帝在位中は、「后(きさい)」。
朱雀帝在位中は、「弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)」。
・朧月夜(おぼろづくよ、おぼろづきよ)・・・
弘徽殿女御(こきでんのにょうご)の妹。
尚侍の君(かんのきみ)と言う官位を賜って、朱雀帝に寵愛された。
・尚侍(ないし の かみ)・・・
内侍司(ないし の つかさ)の長官。女御(にようご)・更衣(こうい)に準ずる地位。
「かむ [かみ] 」は長官の意。ゆえに、「かむのきみ」「かみのきみ」「かんのきみ」と呼ばれる。
本文での「尚侍」は朧月夜を指す。

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●原文
かたはらに並(なら)ぶ人(ひと)なくもてなしきこえたまひなどせしほどに、
[ かたわらに並(なら)ぶ人(ひと)なくもてなしきこえたまいなどせしほどに ]

●原文に漢字を付加
側らに並ぶ人なく持て成し聞こえ給ひ等せし程に、

●訳 1
側に競争相手がいないほど厚く扱い申し上げなさったりしたので、

●訳 2
弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)は朧月夜だけを贔屓(ひいき)になされたので、

●解説
・藤壺女御(ふじつぼのにょうご)・・・
朱雀帝(すざくてい)の女御(にょうご)。
女三の宮(おんなさんのみや)の母。
先帝(桐壺帝のもう一つ前の帝)の皇女(おうじょ)。
朱雀帝が皇子(おうじ)時代に入内(じゅだい)する。
本来は、中宮(天皇の后)という高位になってもよい身分だったが、有力な後見人がいなかったために、宮中での地位が脆弱(ぜいじゃく)なものになってしまった。
母方のほうの系譜の上でも、有力者はいなかった。母親の身分も更衣(女御より一段低い位)だった。
これら諸々の事情から、宮中づきあいも心細かった。
また、姑(しゅうとめ)である弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)が、朧月夜を入内させた。
そして、弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)は朧月夜だけを贔屓(ひいき)にした。
つまり、父方の後見人・母方の血筋・母方の後見人・交際下手(べた)・宮中での待遇という諸々(もろもろ)の理由により、藤壺女御は、宮中生活に精神的圧迫感を感じていた。

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≪参考文献≫
・山岸徳平(校注)(2010)『源氏物語』岩波書店

 
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源氏物語 若菜(わかな) 10

[キーフレーズ]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)の事

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●原文
ものはかなき更衣腹にてものしたまひければ、

●原文に漢字を付加
物(もの)果無(はかな)き更衣腹(かうい-ばら)にてものし給(たま)ひければ、

●訳
たいしたことがない更衣から生まれた皇女でいらっしゃったので、

●言葉の意味
・物(もの)果無(はかな)し・・・
どことなく頼りない。あまり力のない。
・更衣(かうい)
後宮(こうきゅう)で、天皇の寝所に仕える女官の一つ。「女御(にようご)」の下位(五位)。納言(なごん)以下の家柄の女子から選定。
・更衣腹(かういばら・こういばら)・・・
「更衣」から生まれた皇子・皇女
・後宮(こうきゅう)・・・
后妃や、奉仕する女官達の住む宮殿。

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●原文
御(おん)交(ま)じらひのほども心細げにて、

●原文に漢字を付加
御(おん)交(ま)じらひの程(ほど)も心細げにて、

●訳
後宮(こうきゅう)での御付き合いのほうも疎(おろそ)かで、

●言葉の意味
・交(ま)じらひ・・・
交際。付き合い。
宮仕え。
・心細(こころ-ぼそ)し・・・
心細い。頼りない。

●解説
・藤壺女御(ふじつぼのにょうご)・・・
女三の宮(をんなさんのみや・おんなさんのみや)の母。
朱雀帝の女御。

●その他
・助動詞の「き」と「けり」・・・
「き」は、実際に体験した過去。直接体験。
「けり」は、他人から聞いた過去。間接体験。「~したそうだ」。

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≪参考文献≫
・山岸徳平(校注)(2010)『源氏物語』岩波書店

 
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源氏物語 若菜(わかな) 9

[キーフレーズ]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)

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●原文
取り立てたる御後見(おんこうけん・おんうしろみ)もおはせず、

●訳 1
これと言った後見人もいらっしゃらず、

●訳 2
安心して生活できるほどの面倒を見てくれる人もいらっしゃらず、

●解説
藤壺は、父である先帝が早世なされた後、面倒を見てくれる後ろ盾(うしろだて)がいらっしゃらなかった。

●言葉の意味
・後見(こうけん)・・・
後ろ盾(うしろだて)となって面倒を見る者。後ろ見(うしろみ)。

 
●原文
母方(ははかた)もその筋となく、

●訳 1
母方(ははかた)も立派な血筋の方はおらず、

●訳 2
母方も立派な(名門の)家柄というのでもなく、

●訳 3
母方も、これと言った勢力もなく、

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●解説
・朱雀院
桐壺帝の第一皇子。母は弘徽殿女御。
桐壺帝在位中は、「東宮(とうぐう)」。
在位中は、「朱雀帝(すざくてい・すざくのみかど)」。
譲位後は、「朱雀院(すざくゐん)」。
・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)・・・
桐壺帝在中は、「后(きさい)」。
朱雀帝在位中は、「弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)」。
・女三の宮(おんなさんのみや)
朱雀帝の四人の皇女の中の一人。
朱雀院と藤壺女御(ふじつぼのにょうご)との間に生まれた皇女。
・朱雀院の皇女
女一の宮。女二の宮。女三の宮。女四の宮。
・朱雀院の皇子
今上。

 
《参考文献等》
山岸徳平 (翻訳) (2010)『源氏物語』岩波書店

 
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《今日の言葉》
「病は人の見えぬ処より始まりて、やがては見えし処にて現る」
菜根譚

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源氏物語 若菜(わかな) 8

[キーワード]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)

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●原文
まだ坊(ばう)と聞こえさせし時参(まゐ)り給(たま)ひて、

●訳
朱雀院が、まだ、東宮と申し上げた時代に参内なさって、

●意訳
朱雀院が、まだ、東宮であらせられた時代に参内(さんだい)なさっていた御方(おんかた)で、

●言葉の意味
・坊・・・
東宮坊。東宮についての役所。
・参る・・・
参内(さんだい)する。入内(じゅだい)する。

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●原文
高(たか)き位(くらゐ)にも定(さだ)まり給ふべかりし人の、

●訳 1
中宮などの高い位にも、当然お就きなるはずであった御方(おんかた)で、

●訳 2
高い位にも、定まりなさるはずであった人で、

●言葉の意味
・中宮・・・
后(きさい)。皇后。天皇の正妻。

 
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《今日の言葉》
「富者(ふしゃ)は貧者(ひんじゃ)を治め、借りる者は貸す者の奴隷となる」
ソロモン
(紀元前1011年頃 – 紀元前931年頃)
(古代イスラエルの第三の王)
『旧約聖書』より

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源氏物語 若菜(わかな) 7

[キーフレーズ]
四人の女宮

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●原文
御子(みこ)たちは、春宮(とうぐう)をおき奉(たてまつ)りて、女宮(をんなみや)たちなむ四所(よところ)おはしましける。

●訳 1
御子たちは、東宮を除き申し上げて、女宮たちが四人いらっしゃった。

●訳 2
朱雀院の御子は、春宮をお除き申し上げて、四人の女宮がいらっしゃった。

●解説
・春宮・・・
皇太子の別称。東宮。

 
●原文
その中に、藤壺と聞こえしは、先帝(せんだい)の源氏にぞおはしましける。

●訳 1
その中でも、藤壷と申し上げた方は、先帝の源氏でいらっしゃった。

●訳 2
その女宮の中で、藤壺女御(ふじつぼのにょうご)と言われていた方は、三代前の帝の皇女で、源氏でいらっしゃった。

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●解説
朱雀院の病気と出家への思い。
朱雀院の妻の死。
朱雀院の四人の皇女。
朱雀院は、皇女の中の女三の宮(おんなさんのみや)の将来が心配で、出家の意思が固まらない。
+
女三の宮の母が藤壺女御。

 
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《今日の言葉》
「焦りは何の役にも立たない」
ゲーテ

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源氏物語 若菜(わかな) 6

[キーフレーズ]
出家の準備

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●原文
世に久しかるまじき心地ここちなむする

●訳
この世にそんなに長くはいられないと感じる。

 
●原文
などのたまはせて、

●訳
などと仰せられて、

 
●原文
さるべき御心みこころまうけどもせさせたまふ。

●訳 1
(朱雀院は、)出家をするのに相応ふさしい心もりをしておいでになった。

●訳 2
出家をなされる場合の用意をしておいでになった。

●意訳
朱雀院すざくいんは、)出家の準備をなさっていた。

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●言葉の意味
るべき・・・
「そうなる」+「~(する)のが適当だ」
→ 「しかるべき」、「したほうがよい」
・心積もり・・・
前もって考えておくこと。計画。
・設(まうもう)く・・・
準備する
[例文]お酒の席をもうける。

 
《今日の言葉》
「私が人生を知ったのは、人と接したからではなく、本と接したからである」
アナトール・フランス
(フランスの作家)
(1844~1924)

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源氏物語 若菜(わかな) 5

[キーフレーズ]
出家への思いが増す

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●原文
今までおぼしとどこほりつるを

●訳
今まで、躊躇ためらっておられたが、

 
●原文
なほそのかたもよほすにやあらむ、

●訳
前よりもますます出家したい気持ちにられるのだろうか、

●意訳
(私は、自分がもう長くはないと悟っているためか、)無自覚のうちに、出家への思いが増しているのであろう。

●言葉の意味
・なほ・・・
ますます。前にも増して。
・催(もよほ)す・・・
引き起こす。き立てる。
[例文]「春はやがて夏のもよほし」
[訳] 春はそのうち夏の気配を誘い出し。
[意訳](春が終わってから夏が来るのではなく)春は自分が消える前に、自身で夏を誘い出し。
[出典]徒然草 155

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●解説
朱雀院すざくいんは、このたびの御病気になられてからは、もう長くはないと悟られ、出家への思いが日に日に増していた。

 
《今日の言葉》
「本当のことを言っていれば、何も覚えておかなくてもよい」 
マーク・トウェイン
(アメリカの作家)
(1835~1910)

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源氏物語 若菜(わかな) 4

[キーフレーズ]
やりたいようにできなかった

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●原文
きさいみやおはしましつるほどは、

●訳
きさいみやがいらっしゃった間は、

●言葉の意味
きさい・・・
朱雀院すざくいんの母親である弘徽殿こきでん大后おおきさい

 
●原文
よろづはばかりきこえさせたまひて

●訳
すべての面で、遠慮申し上げなさって、

●意訳
万事ばんじにつけて、自分の感情のおもむくままに行動できなかったのだが、

●言葉の意味
・よろづ・・・
あらゆることにおいて。万事につけて。
はばかる・・・
遠慮する。気兼きがねする。

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●解説
朱雀院すざくいんは、母が亡くなって以降は、やりたかった事(仏道修行ぶつどうしゅぎょう)をやろうと考えていた。

 
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≪今日の言葉≫
「人生は芝居のごとし、上手な役者が乞食になることもあれば、大根役者が殿様になることもある。とかく、あまり人生を重く見ず、捨て身になって何事も一心になすべし」
福沢諭吉
(1835~1901)
(同時代の人:
出口なお 1837年生まれ
ニーチェ 1844年生まれ)

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源氏物語 若菜(わかな) 3

[キーフレーズ]
出家への思い

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●原文
としごろ行なひおこない本意ほいふかきを

●訳
朱雀院すざくいんみかどは、)長年、出家しゅっけの意思が深かったのを

●言葉の意味
・ころ・・・
とし」「つき」などの語に付くと、時間経過を表す言葉になる。
としごろ・・・
長年の間。
行なひおこない・・・
出家。仏道修行ぶつどうしゅぎょう
本意ほい・・・
かねてからの願い。

●その他
・本(漢字の成り立ち)・・・
「木」の根本ねもとの部分に「-(しるし)」をつけた字が「本」→(意味)→
根本こんぽんかなめ

●解説
もう長くはないと悟った朱雀院すざくいんは、出家を考えている。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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≪今日の言葉≫
「ある段階を超えると、所有物が主人となり、所有者が奴隷となる」
ニーチェ
(1844~1900)
(同時代の人:
伊藤博文 1841年生まれ
孝明こうめい天皇
1831~1867
在位 1846~1867)

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文花【あやはな】(文学)

源氏物語 若菜(わかな) 2

[キーセンテンス]
もう長くは生きられないと感じる

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●原文
もとよりあつしくおはしますおわしますうちに、このたびはもの心細こころぼそおぼされて、

●直訳
朱雀院すざくいんは、)もともと病気がちでいらせられる中で、今回は何となく心細こころぼそくお思いになられて、

●意訳
朱雀院すざくいんは、)もともと病気がちでいらっしゃったが、このたび病気になられてからは、もう自分は長くはないとお感じになられて、

●言葉の意味
朱雀院すざくいん・・・
光る源氏の兄。
・もとより・・・
もともと。普段から。
あつし・・・
病気が重い。(例:危篤きとく)
・もの心細こころぼそし・・・
何となく心細い。
おぼす・・・
お思いになる。お思いあそばす。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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≪今日の言葉≫
「ゆっくり歩くこと」
シェイクスピア
(イギリスの作家)
(1564~1616)
(同時代の人:
ガリレイ 1564年生まれ
伊達政宗 1567年生まれ)