大空は 梅のにほひに かすみつつ
くもりもはてぬ 春の夜の月
藤原定家
大空は梅の香りに満たされて霞んでいる。そしてぼんやりと曇ったままでいる春の夜の月...
この詩の素晴らしいところは「かすみ」という視覚に加えて、「にほひ」という嗅覚にも訴えているところです。
さらに、「にほい」という目に見えないものを「かすみ」という目に見えるものにしてしまいました。見えるものと見えないものが入り乱れている...
そして「くもりもはてぬ」と続き、朧げさが増していきます。
本歌は、
照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の
朧月夜に しくものぞなき
大江千里
明るくもなく暗くもない春の朧月夜。これに並ぶものはない。
大江の詩の本説(詩を作る際に基にした文)は、
不明不暗朧朧月
白氏文集
明ならず暗ならず朧朧たる月
どれも、ぼんやりとした春の夜を詠んでいる優れた詩です。
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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス
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