●「反実仮想」とは‥‥
現実に反する事を
仮りに想像して述べること。
●「反実仮想」の訳‥‥
もし~(だった)としたら…(だった)だろう(に)
もし~(だった)ならば…(だった)だろう(に)
●反実仮想「~せば…まし」の例‥‥
世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
([出典]古今和歌集 在原業平)
[訳]世の中に桜がなかったとしたら、
春の人の心は長閑【のどか】だっただろうに。
桜があるから、
咲いたか、散ったかを思い煩【わずら】って
春の人の心は長閑【のどか】ではない。
(「た【絶】えて」:「まったく」。
「な【無】かり」:「なし」の連用形。
「せ」:過去の助動詞「き」の未然形。
「ば」:接続助詞。
「のどけから」:「のどけし」の未然形。
「まし」:推量の助動詞。)
●反実仮想「~ましかば…まし」の例‥‥
やがて掛け籠らましかば
口惜しからまし
【やがて かけこもら ましかば
くちをしから まし】
([出典]徒然草)
[訳 1]もしすぐに掛け金を掛けて、家の中に入ってしまったならば、残念なことであっただろう。
[訳 2]すぐに戸を閉めてしまっていたら、風情も何もなかっただろう。
(「ましか」:反実仮想の助動詞「まし」の未然形。直前語は未然形。
「ば」:接続助詞。
「くちをしから」:「口惜し」の未然形。「残念だ・がっかりだ」。)
≪助け物等【たすけ もの など】(参考文献等)≫
・大野晋 (1988)『日本語の文法〈古典編〉』角川書店
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス
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・反実仮想の「まし」2(古典文法)
・ためらい【躊躇い】の「まし」(古典文法)