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文花【あやはな】(文学)

藤原定家 見渡せば

見渡せば 花も紅葉も なかりけり
浦の苫屋の 秋の夕暮れ

 
みわたせば はなももみぢも なかりけり
うらのとまやの あきのゆふぐれ

 
新古今和歌集め
藤原定家
一一六二年生まれ
【にひ いにしへ いま やまと うた つめ
ふじはら の さだいへ
ち も むと ふ とせ うまれ】

 
[譯き]
海邊を見渡してみると、
此処には色美しい春の櫻の花も
秋の紅葉もない。
海邊には苫屋があるだけだ。
寂しい秋の夕暮れよ。
【[とき]
うみべ を みわたし て みる と、
ここ に は いろうつくしい はる の さくら の はな も
あき の もみぢ も ない。
うみべ に は とまや が ある だけ だ。
さびしい あき の ゆふぐれ よ。】

 
[說き]
西行に勧められて詠んだ歌。
華やかさと寂しさの対比。
【[とき]
サイギョウ に すすめら れ て よん だ うた。
はなやかさ と さびしさ の タイヒ。】

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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新古今集 独り寝る山鳥の尾の

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独り寝る 山鳥の尾の しだり尾に
霜置きまよふ 床の月影 

ひとりぬる やまどりのおの しだりおに
しもおきまよふ とこのつきかげ

藤原定家

新古今集 卷第五 秋歌下 0487

●意訳
寒い季節には、山鳥の垂(しだ)り尾に屡々(しばしば)霜が付く。
一人で寝ていた或(あ)る夜のこと、垂(しだ)り尾に付くような形の霜が、布団の上に置かれている?と思ったら、それは月の射す光だった。

●言葉の意味
・置き迷ふ・・・
霜が置いたのかと見間違う。
・霜を置く・・・
霜をいただく。霜を載(の)せる。

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●定家の歌の性質
定家にとって、歌とは、「心の中で感じていることを、そのまま述べる」ものではなかった。
彼は、歌から、「心の動きを、手を加えずに、外に出す」という性質を取り除いた。

●定家について
古(いにしえ)の文学世界の上に立ち、忘れ去られた王朝美を再び世に現そうとした。
後鳥羽院は、彼の美のみを求める姿勢に感銘を受け、『新古今集』の撰者に任命した。

 
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《今日の言葉》
「和歌というものは、人の耳をよろこばしめ、素直に人の共感をそそったら、それで充分のもので、高く気取った意味など持たせるものでない」
太宰治

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新古今集 静かなる暁ごとに

[キーワード]
静寂

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静かなる 暁ごとに 見わたせば
まだ深き夜の 夢ぞ悲しき

しづかなる あかつきごとに みわたせば
まだふかきよの ゆめぞかなしき

式子内親王(しきしないしんのう)

(新古今・1970)

 
(訳 1)
私は毎日、毎日、夜明け前の静寂の中で瞑想をしている。
見渡せば、人々はまだ深い眠りの中にいる。

(訳 2)
夜明け前の静寂の中で私は瞑想をしている。
見渡すと、人々はまだ深い眠りの中にいる。
私は毎日、瞑想をしているが、いまだ悟ることが出来ず、迷いの中、夢の中にいる。

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《今日の言葉》
「怠らず、行かば千里の外も見ん、牛の歩みのよし遅くとも」
徳川家康

 
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新古今集 見渡せば山もとかすむ

[キーフレーズ]
春の夕暮れ

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●原文
見渡せば 山もとかすむ 水無瀬川
夕べは秋と なに思ひけむ 

みわたせば やまもとかすむ みなせがわ 
ゆうべはあきと なにおもいけん

新古今集しんこきんしゅう 36 
後鳥羽院ごとばいん

●訳
見渡せば、山のふもとかすみ、(近くには)水無瀬川みなせがわが流れている。夕暮れのながめは秋に限ると、何故なぜ思っていたのだろう。春の夕暮れもよい...

●言葉の意味
・見渡せば・・・
みをしている宮からのながめ。
・山もと・・・
山のふもと
水無瀬川みなせがわ・・・
今の大阪府高槻たかつき市を流れる川。
後鳥羽院ごとばいん水無瀬離宮みなせりきゅうがあった。
・夕べは秋・・・
清少納言せいしょうなごんが書いた「秋は夕暮れ」「春はあけぼの(夜空がほのかに明るくなる頃)」を意識した。
・なに・・・
どうして。

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≪今日の言葉≫
「心の底からやりたいと思わないなら、やめておけ」
ヘミングウェイ
(アメリカの小説家)
(1899~1961)
(同時代の人:
岸信介  1896年生まれ、
横光利一 1898年生まれ)

 
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花は散り 式子内親王

花は散り その色となく ながむれば
むなしき空に 春雨ぞ降る
             式子内親王しきしないしんのう

(はなはちり そのいろとなく ながむれば むなしき
そらに はるさめぞふる)

桜の花が散って、何を眺めるというのでもなく、ぼんやりとしている。何もない空に春雨が降っている。

平安時代の終わり頃に詠まれた歌です。天皇すめらみことによるまつりごとが終わろうとしていました。また、式子の人生も終わろうとしていました。桜が散るのを見た式子内親王は、色々なものを重ね合わせながら歌を詠みました。

かたは、人並外れて頭が良く、たくみなわざを使いこなしながら、気持ちを火のように燃え立たせて多くの歌を作りました。心の内に盛りあがる気持ちをうたに表したいという思いが彼女の全ての歌に含まれています。
式子の歌は、藤原定家ふじわらのていかの歌作りのわざに万葉歌詠み人うたよみびとあふれ出る思いが混ざっています。これこそが、巧みな技をいしづえとして美しさを表そうとうする行いです。

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≪參ね物(參考文獻)【たづね もの(サンコウ ブンケン)】≫
・林達夫ほか (1972)『世界大百科事典』平凡社
・金田一春彦 (1977)『新明解古語辞典』三省堂
・藤堂明保 (1978)『学研漢和大字典』学研プラス

 
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