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文花【あやはな】(文学)

源氏物語 若菜(わかな) 10

[キーフレーズ]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)の事

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●原文
ものはかなき更衣腹にてものしたまひければ、

●原文に漢字を付加
物(もの)果無(はかな)き更衣腹(かうい-ばら)にてものし給(たま)ひければ、

●訳
たいしたことがない更衣から生まれた皇女でいらっしゃったので、

●言葉の意味
・物(もの)果無(はかな)し・・・
どことなく頼りない。あまり力のない。
・更衣(かうい)
後宮(こうきゅう)で、天皇の寝所に仕える女官の一つ。「女御(にようご)」の下位(五位)。納言(なごん)以下の家柄の女子から選定。
・更衣腹(かういばら・こういばら)・・・
「更衣」から生まれた皇子・皇女
・後宮(こうきゅう)・・・
后妃や、奉仕する女官達の住む宮殿。

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●原文
御(おん)交(ま)じらひのほども心細げにて、

●原文に漢字を付加
御(おん)交(ま)じらひの程(ほど)も心細げにて、

●訳
後宮(こうきゅう)での御付き合いのほうも疎(おろそ)かで、

●言葉の意味
・交(ま)じらひ・・・
交際。付き合い。
宮仕え。
・心細(こころ-ぼそ)し・・・
心細い。頼りない。

●解説
・藤壺女御(ふじつぼのにょうご)・・・
女三の宮(をんなさんのみや・おんなさんのみや)の母。
朱雀帝の女御。

●その他
・助動詞の「き」と「けり」・・・
「き」は、実際に体験した過去。直接体験。
「けり」は、他人から聞いた過去。間接体験。「~したそうだ」。

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≪参考文献≫
・山岸徳平(校注)(2010)『源氏物語』岩波書店

 
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山家集 ゆくへなく月に心のすみすみて

[キーフレーズ]
ぼーっとする

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ゆくへなく 月に心の すみすみて
果てはいかにか ならむとすらむ

ゆくへなく つきにこころの すみすみて
はてはいかにか ならむとすらむ

西行

山家集 353

●漢字を付加
行方無く月に心の澄み澄みて果ては如何にか為らんとすらむ

●訳
ぼーっと月を見ているうちに、心が澄んでいった。どこまでも澄んでいって、このままいくと私の心はどうなってしまうのだろう。

●解釈
感じたままを詩(うた)にした、西行の魅力が溢(あふ)れでている作品。

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《参考文献》
久保田淳・吉野朋美 校注 (2013)『西行全歌集』岩波文庫

 
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《今日の名言》
「世の中を夢とみる」
「捨てぬ人をぞ捨つるとはいふ」(出家をしない者こそが自分を捨てている者である)
西行

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源氏物語 若菜(わかな) 9

[キーフレーズ]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)

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●原文
取り立てたる御後見(おんこうけん・おんうしろみ)もおはせず、

●訳 1
これと言った後見人もいらっしゃらず、

●訳 2
安心して生活できるほどの面倒を見てくれる人もいらっしゃらず、

●解説
藤壺は、父である先帝が早世なされた後、面倒を見てくれる後ろ盾(うしろだて)がいらっしゃらなかった。

●言葉の意味
・後見(こうけん)・・・
後ろ盾(うしろだて)となって面倒を見る者。後ろ見(うしろみ)。

 
●原文
母方(ははかた)もその筋となく、

●訳 1
母方(ははかた)も立派な血筋の方はおらず、

●訳 2
母方も立派な(名門の)家柄というのでもなく、

●訳 3
母方も、これと言った勢力もなく、

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●解説
・朱雀院
桐壺帝の第一皇子。母は弘徽殿女御。
桐壺帝在位中は、「東宮(とうぐう)」。
在位中は、「朱雀帝(すざくてい・すざくのみかど)」。
譲位後は、「朱雀院(すざくゐん)」。
・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)・・・
桐壺帝在中は、「后(きさい)」。
朱雀帝在位中は、「弘徽殿大后(こきでんのおおきさい)」。
・女三の宮(おんなさんのみや)
朱雀帝の四人の皇女の中の一人。
朱雀院と藤壺女御(ふじつぼのにょうご)との間に生まれた皇女。
・朱雀院の皇女
女一の宮。女二の宮。女三の宮。女四の宮。
・朱雀院の皇子
今上。

 
《参考文献等》
山岸徳平 (翻訳) (2010)『源氏物語』岩波書店

 
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《今日の言葉》
「病は人の見えぬ処より始まりて、やがては見えし処にて現る」
菜根譚

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新古今集 独り寝る山鳥の尾の

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独り寝る 山鳥の尾の しだり尾に
霜置きまよふ 床の月影 

ひとりぬる やまどりのおの しだりおに
しもおきまよふ とこのつきかげ

藤原定家

新古今集 卷第五 秋歌下 0487

●意訳
寒い季節には、山鳥の垂(しだ)り尾に屡々(しばしば)霜が付く。
一人で寝ていた或(あ)る夜のこと、垂(しだ)り尾に付くような形の霜が、布団の上に置かれている?と思ったら、それは月の射す光だった。

●言葉の意味
・置き迷ふ・・・
霜が置いたのかと見間違う。
・霜を置く・・・
霜をいただく。霜を載(の)せる。

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●定家の歌の性質
定家にとって、歌とは、「心の中で感じていることを、そのまま述べる」ものではなかった。
彼は、歌から、「心の動きを、手を加えずに、外に出す」という性質を取り除いた。

●定家について
古(いにしえ)の文学世界の上に立ち、忘れ去られた王朝美を再び世に現そうとした。
後鳥羽院は、彼の美のみを求める姿勢に感銘を受け、『新古今集』の撰者に任命した。

 
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《今日の言葉》
「和歌というものは、人の耳をよろこばしめ、素直に人の共感をそそったら、それで充分のもので、高く気取った意味など持たせるものでない」
太宰治

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源氏物語 若菜(わかな) 8

[キーワード]
藤壺女御(ふじつぼのにょうご)

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●原文
まだ坊(ばう)と聞こえさせし時参(まゐ)り給(たま)ひて、

●訳
朱雀院が、まだ、東宮と申し上げた時代に参内なさって、

●意訳
朱雀院が、まだ、東宮であらせられた時代に参内(さんだい)なさっていた御方(おんかた)で、

●言葉の意味
・坊・・・
東宮坊。東宮についての役所。
・参る・・・
参内(さんだい)する。入内(じゅだい)する。

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●原文
高(たか)き位(くらゐ)にも定(さだ)まり給ふべかりし人の、

●訳 1
中宮などの高い位にも、当然お就きなるはずであった御方(おんかた)で、

●訳 2
高い位にも、定まりなさるはずであった人で、

●言葉の意味
・中宮・・・
后(きさい)。皇后。天皇の正妻。

 
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《今日の言葉》
「富者(ふしゃ)は貧者(ひんじゃ)を治め、借りる者は貸す者の奴隷となる」
ソロモン
(紀元前1011年頃 – 紀元前931年頃)
(古代イスラエルの第三の王)
『旧約聖書』より

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足利尊氏の和歌と言葉

[キーフレーズ]
文武両道

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夏祓
なつはらへ

麻の葉に 波のしらゆふ かけそへて
この夕べより かよふ秋風

あさのはに なみのしらゆふ かけそへて
このゆうべより かよふあきかぜ

(出典:延文百首)

 
●訳
麻の葉に波の白木綿(しらゆふ)を添えて川に流した。この祓(はらへ)の神事(かみごと)が神様に届くだろうか。まだ六月末であるのに、夕方に秋風が吹いているのは、その験(しるし)であろうか。

●解釈
・夏祓(なつはらへ)・・・
水無月祓(みなづきのはらへ)、六月祓(みなづきばらへ)、夏越祓(なごしのはらへ)、夏越の大祓式(なごしのおほはらへしき)とも呼ばれる。
一年の折り返しに当たる日に行われるる大祓。
白木綿をかけた麻の葉を川に流して身を浄めた。
現在でも、6月30日に日本各地の神社で行われる。
半年間の穢れを祓い、残りの半年間の健康と厄除けを祈願する。
由来は伊邪那岐命(いざなぎのみこと)まで遡(さかのぼ)る。
夏越祓(なごしのはらへ)と年末の年越祓(としこしのはらへ)がある。
祓は浄めの神事(かみごと)として宮中や神社で日常的に行われている。
・「かよふ」・・・
「風が吹き通う」と「祈りが神に通じる」を掛けている。

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「文武両道は車輪のごとし」

(『等持院殿御遺言』の一節)

 
足利尊氏は二条為定より和歌を学び、三代集を伝授された。また、新千載集の企画立案をした。能楽、生け花、茶の湯など、現代日本の文化と伝統は、尊氏の文化面での活躍から始まっている。

 
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《今日の言葉》
「世論と共に考えるような人は、自分で目隠しをしているのと同じである」
ニーチェ

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新古今集 静かなる暁ごとに

[キーワード]
静寂

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静かなる 暁ごとに 見わたせば
まだ深き夜の 夢ぞ悲しき

しづかなる あかつきごとに みわたせば
まだふかきよの ゆめぞかなしき

式子内親王(しきしないしんのう)

(新古今・1970)

 
(訳 1)
私は毎日、毎日、夜明け前の静寂の中で瞑想をしている。
見渡せば、人々はまだ深い眠りの中にいる。

(訳 2)
夜明け前の静寂の中で私は瞑想をしている。
見渡すと、人々はまだ深い眠りの中にいる。
私は毎日、瞑想をしているが、いまだ悟ることが出来ず、迷いの中、夢の中にいる。

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《今日の言葉》
「怠らず、行かば千里の外も見ん、牛の歩みのよし遅くとも」
徳川家康

 
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源氏物語 若菜(わかな) 7

[キーフレーズ]
四人の女宮

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●原文
御子(みこ)たちは、春宮(とうぐう)をおき奉(たてまつ)りて、女宮(をんなみや)たちなむ四所(よところ)おはしましける。

●訳 1
御子たちは、東宮を除き申し上げて、女宮たちが四人いらっしゃった。

●訳 2
朱雀院の御子は、春宮をお除き申し上げて、四人の女宮がいらっしゃった。

●解説
・春宮・・・
皇太子の別称。東宮。

 
●原文
その中に、藤壺と聞こえしは、先帝(せんだい)の源氏にぞおはしましける。

●訳 1
その中でも、藤壷と申し上げた方は、先帝の源氏でいらっしゃった。

●訳 2
その女宮の中で、藤壺女御(ふじつぼのにょうご)と言われていた方は、三代前の帝の皇女で、源氏でいらっしゃった。

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●解説
朱雀院の病気と出家への思い。
朱雀院の妻の死。
朱雀院の四人の皇女。
朱雀院は、皇女の中の女三の宮(おんなさんのみや)の将来が心配で、出家の意思が固まらない。
+
女三の宮の母が藤壺女御。

 
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《今日の言葉》
「焦りは何の役にも立たない」
ゲーテ

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時により 源実朝

[キーフレーズ]
祈願

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●原文
時により 過ぐれば民の 嘆きなり
八大竜王 雨やめたまえ 

ときにより すぐればたみの なげきなり
はちだいりゅうおう あめやめたまえ

金槐和歌集(きんかいわかしゅう)  
源實朝(みなもと の さねとも)

●意訳
日頃、八大竜王様から頂いている雨も、今回の洪水に際しては、多すぎて民衆が嘆いております。
八代竜王様、どうか雨を止めてください。お助けください。

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1211年の洪水に際して、祈りを込めて詠んだ歌。
為政者として心の底から出た歌。
神奈川県伊勢原市にある大山阿夫利(あぶり)神社にて祈念した。(斉藤茂吉「金槐集私鈔」

・八大竜王・・・
八体の龍神で雨を司る。

・源実朝・・・
1192~1219。
12歳で鎌倉幕府の三代将軍となった。
鶴岡八幡宮で甥の公暁に暗殺された。

 
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《今日の言葉》
「まだ名前が付けらていないものが目の前にある。
名前があって初めてものが見えるようになる。
独創的人間とは、命名者である。」
ニーチェ

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源氏物語 若菜(わかな) 6

[キーフレーズ]
出家の準備

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●原文
世に久しかるまじき心地ここちなむする

●訳
この世にそんなに長くはいられないと感じる。

 
●原文
などのたまはせて、

●訳
などと仰せられて、

 
●原文
さるべき御心みこころまうけどもせさせたまふ。

●訳 1
(朱雀院は、)出家をするのに相応ふさしい心もりをしておいでになった。

●訳 2
出家をなされる場合の用意をしておいでになった。

●意訳
朱雀院すざくいんは、)出家の準備をなさっていた。

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●言葉の意味
るべき・・・
「そうなる」+「~(する)のが適当だ」
→ 「しかるべき」、「したほうがよい」
・心積もり・・・
前もって考えておくこと。計画。
・設(まうもう)く・・・
準備する
[例文]お酒の席をもうける。

 
《今日の言葉》
「私が人生を知ったのは、人と接したからではなく、本と接したからである」
アナトール・フランス
(フランスの作家)
(1844~1924)

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